お盆が終わる。。。!たぬしですー。
回路を0から勉強し始めて、5ヶ月くらい経ちました。
会社では色々やってるけど、未だあんま理解しているとは言い難い。。。
電気系マジ難しいですわ。。(こればっかり言ってる気がする!!!!!)
さて、だいぶ前に過渡応答のRC回路の振る舞いを理論的に導いたので、今回はRL(インダクタンス)の回路で同様に振る舞いを導きたいと思います。
過渡現象って実験的にもかなり重要ってことが、そこはかとなくわかってきました。

【問題】図1のRL直列回路においてt = 0の時に、直流電圧Eを印加したとする(t = 0の時スイッチをONにしたと考えてよい)。このとき流れる電流および各素子にかかる電圧を求める。
コイルとはどのような振る舞いをする素子なのか?

コイルは、見たことある人もあると思うけれど、鉄心にくるくると銅線などが巻きつけてあったりする素子であり、有り体に言って存在感があります。
見た目がくそ面白いし、是非見て欲しいと思うので、写真を載せておきます。
こいつの回路上での振る舞いを簡単に言うなれば、ある瞬間に電流を流したとき(スイッチをONにしたとき)、電流の変化を妨げるように働く素子です。
スイッチをオンにした瞬間は電圧が0から跳ね上がるので、一番変化が大きい。
この瞬間、コイルは一番反応して、妨げてやるぞー!と逆の電流を流そうとします。
そのため、時間によってコイルの電圧が変わってくるというわけです。
前回の過渡応答の記事でも話したが、最終的(t = ∞)では、こいつも電流の変化を妨げる振る舞いを止めて定常状態に落ち着きます。
上述のように、電圧の変化に時間の幅があり、最終的にはある状態に落ち着く、という振る舞いに落ち着くのです。
最終的に落ち着くまでどのような振る舞いをするか?(電圧軸と時間軸を見て)というのを調べるのが過渡現象の解析対象となります。
ここら辺の過渡応答の概念については、以前、直列RC回路の記事で書いたのでそちらを参照して頂ければと思います。
関連記事: 電気回路のお勉強・過渡現象ことはじめ(1) RC直列回路
この電流を妨げる度合いは、インダクタンスLと今回は抵抗値Rの値で変わってきます。
これは、力学で言うところの作用反作用の法則に似ています。
力を加えると、それに反発するような力が働く、というのは自然界でよく見られる現象です。
例) レンツの法則
回路の微分方程式を解いてみよう
回路に流れる電流をiとして、キルヒホッフの法則(電圧則)を使用します。
キルヒホッフの法則自体の解説はどこか他のところでやろうかなー、と考えています。
回路の方程式は、
\begin{align}
E – Ri – L\frac{di}{dt} = 0 \tag{1}
\end{align}
となる。
次に、電流の項と時間の項でそれぞれ分けます。
確か、変数分離形と言ったはずですが、既書を参考にして頂ければと思います。
これによって両辺を独立に積分することができるようになります。
\begin{align}
L\frac{di}{dt} = E – Ri \\
L di = dt (E – Ri) \\
\frac{di}{E – Ri} = \frac{1}{L} dt \tag{2}
\end{align}
両辺の積分をとると、
\begin{align}
\int \frac{di}{E – Ri} = \frac{1}{L} \int dt \tag{3}
\end{align}
となります。
ここで右辺は簡単に積分できるということがわかるが、左辺は少し工夫をせねばなりません。
分数の積分なのでlogの形になるんやろなーと思うのだけど、分子を見てみると微分するiの前に定数Rがついております。
そのため、log(Ri- E)を微分した時、分子にRが付いてしまい、\( (log(Ri -E))’ = \frac{R}{Ri – E}\)となります。
式(3)の分子にはこのRが足りないため、あえて補ってやる必要があります。
その結果、式(3)を少し変形して、
\begin{align}
-\frac{1}{R}\int \frac{Rdi}{Ri – E} = \frac{1}{L} \int dt \tag{4}
\end{align}
これを積分すると、
\begin{align}
-\frac{1}{R} ln(Ri – E) = \frac{t}{L} + C \tag{5}
\end{align}
lnはeを底としたlogの事で、Cは積分定数。こいつを変形すると、
\begin{align}
-\frac{1}{R} ln(Ri – E) = \frac{t}{L} + C \\
ln(Ri – E) = -\frac{Rt}{L} – RC \\
e^{ln(Ri – E)} = e^{(-\frac{Rt}{L} – RC) }\\
Ri – E = e^{(-\frac{Rt}{L} – RC)}\\
Ri – E = e^{- RC} e^{-\frac{R}{L}t}\\
Ri – E = A e^{-\frac{R}{L}t} \tag{6}\\
\end{align}
ここで、\(e^{-RC}\)は定数なので、Aという新しい定数に置きなおしました。
初期条件を代入する
初期条件というのは、時間t = 0の時の条件を考えることが多いです。
何故なら、時間0の瞬間は電流は流れていないので、 i = 0とたちどころにわかるからです。
この条件を代入すると式(6)は
\begin{align}
-E = Ae^{0} \\
-E = A
\end{align}
ついに積分定数が得られた!
式(6)に再度代入すれば、
\begin{align}
Ri – E = -E e^{-\frac{R}{L}t}\\
i = \frac{E}{R}{ (1 – e^{-\frac{R}{L}t})}
\end{align}
抵抗RとコイルLにかかる電圧\(E_R, E_L\)は
\begin{align}
E_R = Ri = E(1 – e^{-\frac{R}{L}t})\\
E_L = L\frac{di}{dt} = L(-\frac{R}{L})\frac{E}{R} ( – e^{-\frac{R}{L}t}) = E e^{-\frac{R}{L}t}
\end{align}
これで、電流、各素子にかかる電圧の一般式を導くことが出来ました。
LTspiceを使ったシミュレーション

今回解析した回路を使って、実際にどのような電圧の振る舞いになるかを計算させてみました。 LTspiceは無料ソフトであり、回路勉強する際は無敵の友となり得るので、絶対にインストールした方が良いです。
比較的扱い方も簡単ですし、僕を含め初心者でも少し我慢すれば、気軽に使えるようになります。
その他の物理計算の多くのシミュレーションソフトと比較しても非常に扱いやすいソフトなのではなかろうか?と思うております。(少なくともこれまで自分が使ってきたものよりも。) さて、実験させた回路を以下に載せておきましょう!
LTspiceのインストールの方法や命令の仕方は、他の記事に詳細に載せているので、そちらを参照ください。
→ LTspiceのインストール方法
→NPNトランジスタ(2SC1815)によるエミッタ接地回路【1】の「LTspiceによるシミュレーション」に載せてあります。
シミュレーション条件と結果
シミュレーション条件は、L = 100mH, R = 333Ω, 印加電圧E = 1 Vのパルス波としました。
何故パルス波にしたかというの、スイッチのオン・オフを再現するために使用しました。
時間t = 1msになったらスイッチがオンになり、 t = 3msでオフになるという回路です。
パルス波の設定は、初めて行ったので、説明を残しておきます。
図4のように上から二つ目のPULSEを選びます。
- Vinitial : シミュレーション開始時の電圧。何も入力しない場合0 Vになる。
- Von : パルスがON状態の時の電圧。何も入力しないと0 Vとなり、パルスは出力されない。
- Tdelay : シミュレーション開始からパルス開始までの時間。シミュレーションと同時にパルスを開始したい場合は0でOK。
- Trise : パルス立ち上がりから、Vonになるまでの時間を指定する。0とするとLTspiceの独自の値が放り込まれ、時間遅れのあるパルスが出てくる。時間遅れのないパルスにするには、0とみなせる十分小さい値にする必要がある。今回は、0.001msとした。
- Tfall : パルスがONからOFFまでの立ち下がる時間。上述と同じく、0としても、時間遅れのあるパルスが出てくる。そのため、今回は0.001msとした。
- Ton : パルスがONになっている時間。
- Tperiod : パルスの周期。
- Ncycle : 発生するパルスの数を指定することが出来る。何も入力しない場合は、連続してパルスを発生。

図5に電圧E = 1 Vの時の、コイルと抵抗の電圧のシミュレーション結果(立ち上がりに時間がかからないとう理想的な状態)を載せました。
入力電圧Eを見てみると、スイッチのオン状態がt = 1msの点で、入力電圧が立ち上がり1 Vになっております。その後、t = 3msでスイッチオフになります。
コイルの電圧および抵抗の電圧は、回路理論から導き出された結果の数式とグラフ概形が合致していることがわかります。
詳細にグラフの変化を見てみましょう。
まず、コイルの電圧の変化を見てみると、スイッチをONにした瞬間、爆発的に跳ね上がり、1 Vまで上昇しています。
この急激な電圧変化(スイッチをオンにすること)が、コイルの動き出す原因になっています。
回路に流れる電流(図6)を見てみると、抵抗に即座に電流3 mA流れるはずですが、理論で求めた数式通りゆっくりと上昇しております。
すなわち、コイルがこの電流の上昇を妨げるように働いているという現象が見受けられます。
これをコイルに逆起電力が生じる、と言ったりもします。
2.5 msあたりからは定常状態に入ってきて、コイルの電圧は0 Vに漸近し、抵抗に電圧がかかる状態になっています。
さて、なぜコイルはこのような振る舞いをさせることができるのか?と思うのだけれど、それは勉強した後、他の記事で解説していく予定です。
スイッチがOFFに成った時も、コイルに逆起電力が生じ、抵抗の+電圧と足し合わさって0になっていることがわかります。
この現象は本当に起こっているのだろうか?って思ってるのだけど、実験的にどうやって確かめるのか不明です。
かなり過渡現象に時間がかかるようにコイルや抵抗の値を決めて実験するのでしょうか?(そんなコイルが普通に買えるのか?)
電圧の変化を見るより、電流の変化を見た方が、コイルの振る舞いがわかりやすいかもしれません。
次に、回路に流れる電流の時間変化を見てみましょう。(図6)

入力電圧がONになった瞬間には、電流は流れていないということがわかります。
抵抗だけを挟んでいる場合はすぐに、電流が流れ始め抵抗の電圧が1 V(電流で言うと3.00 mA)になるはずですが、ゆっくりと上昇して、t = 3msで定常状態になっている様が見て取れます。
すなわち、コイルによって電流の変化を妨げているということです。
t = 3 msの時、スイッチをOFFにしましたが、この時、抵抗だけの回路ならすぐに流れる電流も0 Aになるはずです。
しかし、コイルがいるおかげで、電流の変化が妨げられ、すぐには電流が0にならないように動作しております。
コイルの振る舞いは、このように電流を通してみた方がイメージが掴みやすいかもしれません。

今回はここまでですー。