今回は、電気回路ガチ素人の私が回路を学び始めて5ヶ月が経過した現在、強く思うことの一つを強く主張していきます。
結論から言うと、電気回路初心者は速攻LTspiceという名の回路シミュレーターをインストールして使い倒せ!ということです。
今年会社に入社してから、人生で始めてアナログ回路を主とした実験に従事し、新たに電気回路をはじめとした電気系の技術を学び始めました。
そこで、様々な業務に従事したわけですが、実験をやる際にも、とにかくLTspiceの重要性は高いと感じています。
その理由をツラツラと述べていこうと思います。
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目次
回路初心者こそLTspiceを使い倒した方が良い理由
無料ソフトなのに様々な回路をシミュレートでき、かつ初心者でも非常に扱いやすい
まず、LTspiceというのがどういうものなのかを説明しましょう。
LTspiceはアナログ・デバイセズ社が出している回路シミュレーターで、回路上にある素子の定数を指定することで、電気回路の電圧や電流を求めたり、グラフ化したりすることができます。
抵抗は5 Ωで、電圧が5 Vの閉回路があったとすると、電流は1 Aとすぐに出してくれる、といったソフトです。
抵抗以外にも、コイル、ダイオード、果てはオペアンプといったものまで幅広く素子を選択することができ、大きな回路もシミュレートすることが可能です。
これだけ聞くと、滅茶苦茶難しいんやないの?といったイメージを受けると思うけれど、最初に少し覚えることを覚えてしまえば、割と簡単です。
プログラムを書くのではなく、回路を配線すること自体が、シミューレートする条件になるというものなので、自分が作りたい回路をそのまま絵として描いてしまえば、それがそのままシミューレートプログラムになります。
わかりにくいと思うので、図1の絵を見ていただきましょう。


見ていただいた通り、もろに回路図が書かれています。
R1の下に書いてある333は333 Ωということを表していて、数字を打ち 込むでOKです。
PULSE(0 1 1m 0 0 2m 6m)という部分はパルス波を出せという命令を表しており、この部分をsin波や直流に変えることもできます。
この英語の部分は命令内容を示していて、命令のさせ方とソフトの使い方の二点は、初心者が学ぶ必要がある点であります。
これが、学習におけるコストだけれど、回路図を描くこと自体は割と直感的で簡単に行えるので、普段パソコンを使っている人ならそこまで手間取るわけではないと思います。
ここで強調しておきたいのは、使うのは割と簡単で、すぐ結果が得られるということです。
ちなみに上の回路で得たグラフの例を図2載せておきます。
入力電圧とか、スイッチON等の文字と点線は、後から僕が書いたものだけど、グラフ自体は、LTspiceの機能であり、回路上で電圧の差をみたい点を2箇所クリックすればすぐ見ることができます。
LTspiceのインストールの方法や命令の仕方は、他の記事に詳細に載せているので、そちらを参照ください。
→ LTspiceのインストール方法
→ NPNトランジスタ(2SC1815)によるエミッタ接地回路【1】の「LTspiceによるシミュレーション」に命令の方法を載せてあります。
実際の回路を作る前に振る舞いを確認できるので、実験が成功したかわかりやすい

例えば、教科書等に載っている回路を組んで実験するとしましょう。
教科書には回路解析と銘打って、数式でそれなりに各素子間電圧とかが載っています。
しかし、すべての素子の電圧や、電流が載っているわけではないですし、素子の値も多くは文字式で書かれていて、実際の数字ではありません。
しかも、電池を少しずつ0から10 Vまで変化させたりしたい時、実験ではその作業は割と大変です。
何せ、1.5 Vで測定し終わったら、次は3 Vの電池を繋いで・・・と繋ぎ変えが必要だからです。
繋ぎ変えが必要ということは、ミスが増える可能性があり、測定も結構大変です。
そういう場合、回路がどういう振る舞いをするのか?というのを初心者が実験で正確に確かめるのは非常に困難だと思われます。
しかも、回路は多くの場合、交流を扱うため、人間の脳で想像しうる限界を超えた振る舞いが生じます。
自分がやった解析の例を出すと図3のグラフとかも想像できませんでした。
上のグラフはバイアス電圧を0.5 V変えたところ、波の形が徐々に変化していく様を現しています。
見ていただいた通り関数が複雑であり、これを数式で表されているという教科書は見たことありません。
しかし、実際には実験でも生じる波の形であります。
初心者の僕は、実験でこれを見て、果たして合っているのかさえ判断がつきませんでした。
シミューレートして、結果をよく考えて腑に落ちるということがありますので、その点でもLTspiceは有用だと断じえます。
このグラフを出した記事は → トランジスタ(2SC1815)によるエミッタ接地回路【4】:電圧増幅回路の設計とLTSpiceによる詳細なシミュレーション
さらに実験を行いオシロスコープで電圧の時間変化を測定しています。
シミュレーションと比較することで、より深い知見を得ることが出来ます。
記事 → トランジスタ(2SC1815)によるエミッタ接地回路【5】:電圧増幅回路の挙動をオシロスコープで確認(RIGOLDS1054使用)
実際にある電子部品(素子)をソフトのシミュレーターに取り込むことができる
さらに、LTspiceでは、無料版でも実際に世の中にある製品のパラメータをシミュレータに取り込んで、計算させることが可能です。
トランジスタの特性などは、物によって様々違いますが、この機能を使えば本物の製品に近い特性でシミュレーションさせることが可能となります。
この機能は、結構自由度が高くかなり良いものだなーと思うております。
僕は、2SC1815というトランジスタを実際に取り込んでシミュレーションをしています。
取り込み方は、以下の記事にありますので、気になった方はご参照下さい。
→ NPNトランジスタ(2SC1815)によるエミッタ接地回路【1】の「LTspiceによるシミュレーション」に載せてあります。
小規模な回路ならシミュレーションにかかる時間が短いため、やる気次第で大量の回路に触れることが可能
小さな回路だと、慣れると回路を描き始めてから3分位でシミュレーション結果を得ることができます。
シミュレーション自体は1秒もかからず一瞬で終わることが多いです。
非常に長い回路の過渡応答とかは時間がかかる傾向にあります。
小規模回路ならば、極端な話、簡単な回路をつくりまくって、その振る舞いを考え続ければ、自分の回路脳が強化されていくことは間違いありません。
回路の勉強は、外国語の習得に似ている部分があると感じていて、基本的な回路をたくさん理解して、その動きを理論的にも知っていることが後々凄い重要になってくると感じております。
そのため、勉強の時間はどうしてもかかりますし、基礎的な回路の塊をたくさん知る必要があります。
社長に聞いた話ですが、かつては、設計した回路が動くかどうかを、実験で検証するしかなかった、ということです。
ゆえに、一つの回路を試すのに多大な時間がかかってしまい、失敗した場合は、あーでもねぇ、こーでもねぇと抵抗値の値を変えまくったりしていたようで、検証実験に多くの時間がかかったようです。
今ではそれをパソコン上で出来るので、ある程度の回路の振る舞いは確かめられますし、それによるプラスの効果は計り知れないと思います。
オススメの書籍
僕が唯一使っているLTspiceの本を紹介します。
初心者のうちは、当分この本だけでいいんじゃないか?というくらいでして、難しいことをしなければ、大体命令の仕方とかはこの本に載っています。
他の本を今の所必要としていないので、最初にやるには良い本なのではないかと思っています。
僕がLTspiceを動かす上で、唯一買った本を載せておきます。 当面は、以下の本 + ネットの情報のみで何とかなります。
まとめ
- LTspiceは無料の回路シミュレータソフトである
- シミュレーションの要素は、命令と回路図の二つであり、主に命令の方を学べば割とすぐにシミュレーションさせることができるため、初心者に優しい
- 実際に存在する電子部品をシミュレーションに取り入れることができるため、自分が作りたい回路の振る舞いを計算させることができる
- 簡単な回路のシミュレーションにかかる時間は一瞬であるため、やる気次第で様々な回路の知見が得られる