回路技術

直流安定化電源の安定性測定(YaeCCC MS-305D)

直流安定化電源…それはアナログ回路における輝ける希望

電流源においては貴重な直流を、まるで公園にある蛇口の如き安定感をもって吐き出してくれる甘美な装置。

このネーミングにおける「安定」ということばが意味することは、時間が経っても、同じ直流電圧を出力し続けるということであります。
それは、まるで公園の水のごとしであり、仮に公園の蛇口から出る水が、急に勢いが変わったりしたら困るわけです。

電気界における蛇口、それが直流安定化電源なのであります。

実験においては、非常に重要なファクターを持つ野郎でして、こいつの安定性に我々の実験結果がかかっていることもままあるわけです。

というわけで、僕が所有しているYaeCCC MS305-Dなる安定化電源が本当に安定であるのかどうかを、実測して調べました。

けれど、このようわからん会社の電源、素性が非常に分かりにくく、会社のホームページにさえ、詳しい情報がありませんでした。

安いから良いですが、正直一抹の不安は残りますね。

直流安定化電源の安定度測定

MS305-Dのカタログスペックと見た目

電気性能 MS305-D
入力電圧範囲 AC110V±10%(60Hz)
出力電圧範囲 0~30 V
出力電流範囲 0~5.0A
負荷制御 ≤0.3%+5mV
リップル 10m Vrms
ヒューズ 250V 1.5A(φ5 × 20mm)
出力安定化方式 スイッチングレギュレーション方式

まず、買った際も特に詳しいスペック表が載った紙が入っていたわけでもなく、この会社のページにさえ、大した情報がありませんでした。
もはや、なめてるやろ!

その結果、上記スペック一覧の中で、出力電圧の安定性に関係がある部分はリップルの項だけです(赤マーク)。

リップルというのは、明確に回路の物理から導かれる、電圧および電流の振動現象のことで、よく整流回路の説明などに現れております(図1参照)。
特に、直流安定化電源においては、コンセントからとる交流電源をダイオードで整流して、図1のような波形に近づけます。
リップル幅が非常に小さくなれば、直流とみなすことが出来るというわけです。
リップルはノイズとは別の概念であるということを強調しておきます。

図1の矢印で示すように、リップルには幅がありまして、これは小さい方が性能が良いことになります。
MS305-Dでは、リップル ≦ 10mV ということなので、それくらいの電圧変動は装置の使用範囲内ということになります。
けれど、リップルではないノイズなどの仕様は載っていないので、どれほどの電圧振動があるかは不明です。

このリップル測定も、僕持ってるオシロスコープで観測出来たら載せようと思います。

リップルの概念図図1 リップルの概念図

 

測定に必要な装置一覧

部品および装置 社名・型番 値段
直流安定化電源 YaeCCC MS-305D 5900円
PCとテスターを接続するUSBケーブル SANWA KB-USB7 7798円
専用測定ソフト SANWA PCLink7 7100円
テスター SANWA PC7000 24641円
パソコン WindowsならOK  
オシロスコープ RIGOL DS1054Z (リップルを見る場合)  
 
 
もしリップル測定もしたい場合は、オシロスコープも必要です。
とはいえ、今回はこのオシロスコープはオススメしません。
もうちょっと性能が良いオシロが必要に思います。

安定度測定の方法と実験結果

測定方法

 

測定風景の写真図2 測定風景の写真

以下に、まずは簡潔に測定方法を載せていきます。
単純に、テスターを直流安定化電源から出てくる、プラスとマイナスに直に繋いで測定します。
パソコンとテスターをKB-USB7で繋ぐことで、パソコンにデータを送り、長時間測定の結果を随時パソコンに取り組むというわけです。
図2になるべく全体が写るように写真を撮ったので参考にしてください。

  1. MS305-DのプラスをPC7000の赤い端子にクリップで繋ぐ
  2. MS305-DのマイナスをPC7000の黒い端子にクリップで繋ぐ
  3. PC7000の裏側にKB-USB7を接続し、もう一方を自分のパソコンのUSBに繋ぐ
  4. パソコン上でPCLink7を立ち上げる。
  5. PC7000をONにして、直流測定モードにセット。PC7000と接続を開始
  6. MS305-DをONにして15 Vにセット。

PCLink7の接続画面を以下に載せておきます。
左上のデータ履歴の部分に測定データがずらずらと流れていきまして、終了ボタンを押してもまだこのデータは残っています。
その後、保存すれば普通に時間と電圧が保存されます。
この点は非常に良いです。

測定結果さえデータとして保存できれば、後に示すようにデータ解析は他のソフトで出来ます。

ただ、7000円もするソフトであることを考えると、データを取得できるという点以外のメリットはないような気がします。
データも確か、10時間以上は保存できませんし、なにより図を見て頂くとわかります通り、図が見にくいのです。

しかも、一番の問題は、自由に拡大出来ないことです。
これにより、小さい値の電圧変動を観察することはこのソフトだけではできません。

PCLink7の使用風景図3 PCLink7の使用風景

測定結果

夜寝る前に測定を開始し、朝起きてから装置を止めましたので、約10時間の時間測定していたことになります。
横軸を時間、縦軸を直流安定化電源の出力電圧として、グラフにしてみました。
測定を開始する前に、PCLink7を立ち上げていたので、直流安定化電源の電源を入れた瞬間から、測定結果を得ることが出来ております。
さてグラフが、どうやらギザギザと振動しているのですが、この原因はテスターの分解能の限界を超えているからであります。
テスターの表示も小数点3桁以上は無理なので、それ以下の変動はとらえきれていないのです。

電圧変動の時間依存性図4 電圧変動の時間依存性

さて、全体の振る舞いですが、電源投入直後は急遽値が落ち込んで、その後徐々に上昇といった形をとっております。
7時間くらいたったところで、僕が部屋に入って確認をしたのですが、そのせいで、この上昇が途切れてしまったかもしれません。

電圧変動の値を調べてみましょう。
単に、電圧の最大値 – 最小値ですから、

\begin{equation}
\Delta V = V_{\rm max} – V_{\rm min} = 15.046 -15.034 = 0.012 {\rm V}//
\end{equation}

マジすか!?
怪しげな商品の割に、電圧変動低くないすか!?

これだけ見ると、これより2倍以上値段が高かった、DPS3003より良い値ということになります。
9時間50分経過して、電圧変動が0.012 V。
すなわち、15Vの入力に対して0.08%の変動率であります。

でも、実際の値は、15 Vより少し高いので、多少の誤差は生じています。

測定結果まとめ

15 VでMS305-Dを9時間50分駆動し、テスターで直流電圧を測定した結果
変動電圧Δ V = 0.012 V (15 Vに対して0.08 %)

 

リップル測定

リップル波形(直流安定化電源は15 V)図5 リップル波形(直流安定化電源は15 V)

以下に直流安定化電源の電圧が15 Vの時のリップル波形を載せております。
測定の分解能は、電圧軸が5.00 mV、時間軸が10 msです。
うーん、リップルなのかどうか明確にはわからない上、ノイズもすごい乗ってしまって、幅がどれくらいか測定出来ませんでした。
黄色い線がぼやけているのがわかると思いますが、y軸方向にこの輝線が伸びまくっていて、グリッド線を消してしまっているのです。
おそらく、2目盛分くらいだとすると、10 mV程度の電圧幅を持っている、ということになります。
仕様では、リップル ≦ 10mVなので、だいたい仕様値くらいと見てよいのかなー、と言ったところ。
とりあえず、厳密にはこのオシロでは測定できないことがわかりました。

30 Vまで上げてみたらどうか、というのが図6です。
分解能は先ほどと同じで、電圧軸が5.00 mV、時間軸が10 msです。
うーん。。。あんま15 Vの時と振る舞いは変わらないように見えますね。
むしろどこか変わったの?的な波形。
およそ、10 mV位のリップルということであります。

リップル波形(直流安定化電源は30 V)図6 リップル波形(直流安定化電源は30 V)

 

瞬時特性(ダイナミック特性)の測定 (失敗)

入力・負荷条件が急変したときの変動を含めた出力電圧の特性のことを、ダイナミック特性と呼びます。
負荷が急に変動する実験などでは、重要になってくる仕様のようです。

どうやって負荷を急変させようかと考えていたのですが、原始的に、繋いでいる抵抗を一個急に取り外す、という方法でやってみることにしました。

今回は、二つの330Ω抵抗を並列に繋ぎました。
330Ωにした理由は、そこらへんに2つ転がっていたからで、論理的な根拠はありません。
どれくらいの抵抗値が適正かも不明でしたし、過渡応答を見ることが目的なので、どの値だろうが、変化の様を観れれば良い、という判断であります。(本当は、何か明確な指標があるのだろうと思いますが、、、)

さて、肝心の負荷を急に変動させる方法ですが、330Ω二つを並列にしておき(下の図7左)、それを急に片方外す(下の図7右)、というものです。
同じ値の抵抗を2つ並列につなぐ場合の合成抵抗は、繋いだ抵抗値 / 並列に繋いだ抵抗の数 で求められます。
今回は、330Ω / 2 = 165Ωということで、実際テスターでもそのように出ております。

この状態で電源を繋ぎ、オシロで測定すれば良いと考えました。

瞬時に抵抗を変化させる手法(330Ω→165Ωへ)図7 瞬時に抵抗を変化させる手法(330Ω→165Ωへ)

 

さて、330Ωを並列に二つ繋いだ状態で電源を繋ぎ、電圧を5 Vに設定した状態が、図8です。
165.59Ωの抵抗に電圧5 Vかけた時に流れる電流は、5 / 165.59 = 0.0302 A = 30.2 mAのはずです。
しかし、図8を見てみますと26 mAなので4.2 mAほど実測値とずれているわけです。

もしくは、この左の値が、流れている電流値を表しているわけではないのかもしれない。。。説明書がラフすぎて、把握できていません><。

図8 抵抗に直流安定化電源MS305-Dを繋いだ状況

さらに、オシロスコープを繋いだ写真が図9です。
これは、抵抗を一個外した状態です。
何度も急に外して測定を試みていたのですが、抵抗には電流が流れているわけで、結構危険なので注意してください。(というか、やらない方がいいかも!)

抵抗にMS305Dおよびオシロスコープを繋いだ状態図9 抵抗にMS305Dおよびオシロスコープを繋いだ状態

 

 

途中、あまりに測定できないので、電圧をあげて測定していたのですが、なかなか成功しません。
時間はどんどん経過していきます。
するとどうなるか?
そう、ジュール熱で、抵抗がどんどん熱くなって行くのです。

10 V電圧をかけた場合、60.606 mA流れるわけなので、ジュール熱Qを求めますと、

\begin{equation}
Q = VI = 10 \times 60.606 {\rm mA} = 0.606 [{\rm J/s}]
\end{equation}

仮に、10分流したとすると、

\begin{equation}
Q_t = VIt = 0.606 = 363.6[{\rm J}]
\end{equation}

抵抗の比熱がわからないので水にした場合、この熱量で何度温度が上昇するかを考えてみましょう。
抵抗一個と同じ位の重さだとすると、5g程度でしょうか。(そんなないかもだけどそう仮定しましょう)

水の比熱は4.2[J/K・g]なので、温度変化をx [K]として立式しますと、

\begin{equation}
熱量[{\rm J}] = 4.2[{\rm J / K・g}] \times 5 [{\rm g}] \times  x [{\rm K}]
\end{equation}

x = 17.3あたりです。
つまり、だいたい色々なことをシカトしてざっと考えると、水でさえ17度くらい上がるほどの熱量が10分で出ています。
 
僕の場合、値を結構変えて、30分ほどは粘っていたので、どれくらい温度が上昇していたかわかりませんが、抵抗に触れた途端、死ぬほど熱くて飛び上がりました

しかも、うちのオシロスコープでは、時間変化を追えないということがわかりました。
測定すらできないとは!!

抵抗を使った測定は、熱くなったりすると危険なので、今後のためにもヒートシンクに抵抗を取り付ける治具を作った方がよいと思い至り、現在製作中です。

つか、このオシロスコープでは、本当に測定できないのか、それとも実験の腕が悪いのか、
ちょっと、まだ判定不能です。
これに似た測定は、会社でだいぶやったので、それなりに把握しているはずですが、エッジのトリガー設定しても、全然反応しなかったからなぁ。。。

 

その他の直流安定化電源の安定性測定

僕が所持している、他の直流安定化電源についても同様に測定しましたので、記事を載せておきます。

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