物理

電磁気学初心者が学ぶのにオススメの書籍

こんばんは!たぬしです。

入社して、電気回路関係の勉強を始めて7ヶ月が経ちました。

回路関係のお話に直接関係があるわけではありませんが、基礎を支える土台として、電磁気学の存在が挙げられます。

これまで、僕が勉強してきて初学者にとって良いと思った電磁気学関係の本を紹介していきたいと思います。

これらの本をやり込むことで、電磁気学の基礎はほぼ完璧になると考えてもらって大丈夫です。

電磁気学の本

電磁気学I 電場と磁場 長岡洋介 (岩波書店)

この本は、電磁気学を学ぶ際に、多くの大学などで教科書として使われている本だと思います。

物理入門コースなどとうたわれておりますが、多くの学生を奈落に突き落としてきた電磁気学だけに、学ぶのはなかなか難しいです。

しかして、この本は、数式の展開もそこそこ、細かくやってくれており、高校数学程度と大学数学の少しを把握しておけば、式展開は終えると思われます。
この数式が難解であるということが、我々初学者を黙らせてしまうことが多いので、なるべき必要な数学についても触れておきます。

この本を全て読んで使われていた数学は、高校で学んだ微積分・外積の計算・簡単な微分方程式・rotやdiv, grad等です。

特に、外積の計算は高校ではやらなかったはずなので、慣れておく必要があると思われます。
rotやgrad等のベクトル解析の計算も多々出てきますが、これは触れておかなくても、この本で初めて学んだとしても、頑張ればいけるかと思います。

ただ、いきなり数式を全部わからないとしても、絵で概念をイメージすることが重要なので、この本を読みつつ絵をたくさん書くのがいいです。
この本は、文章の説明は豊富で非常に良いのですが、絵が少ない気がしますので、そこはネットとか他の本とかで補うのが良いです。
特に、アンペールの法則は非常に興味深く、説明も良かったです。
クーロンの法則の説明で近接作用について書かれているのも良かったです。
普段生きていて、こういう考えを持つに至らない、といった物理特有の概念が提唱されておるのです。

その他の事前知識として、物理の力学の知識はあったほうが良いです。
というか、力学のある程度の知識がないと説明の意味がわからない部分があるかと思われます。
というのは、ポテンシャルの説明などを読むと、一見して初学者が理解できるとは思えないのです。
力学において、エネルギーの概念とかを学んでおけば、話がスムーズに運びますが、これだけでは、結構きついものがあります。

この本では、静磁場を扱っており、動磁場は電磁気学Ⅱに譲ります。

電磁気学Ⅱ 変動する電磁場 長岡洋介 (岩波書店)

この本からは動磁場を扱い、最終的にマクスウェル方程式に行き着きます。

個人的に一番面白かった・感動した部分は、マックスウェル-アンペールの法則に関する説明です。
コンデンサー一個だけの閉回路を考えた時、閉曲面の取り方によって矛盾が生じてしまうのですが、そこから変位電流という概念が生まれ、ただのアンペールの法則が、マックスウェル-アンペールの法則へとより普遍性を持った概念へと昇格するのです。
その様が凄い熱いので、是非読んで欲しいところです。

話は逸れましたが、全体的に深入りせずによくまとまっていると思います。
磁性などは、深入りせず最低限のことだけ触れております。

Iより非常に薄い本なのですが、名著だと思います。

電磁気学を学ぶためのベクトル解析 関根松夫 (コロナ社)

これは、電磁気を学ぶための数学の本ですが、僕はこの本はマイナーだけれど、隠れた名著なのではないかと感じております。

基本的に静磁場を題材として扱って、とにかく計算をさせようといった本でして、例題は計算の途中式がかなり載っております。
問題数も多いのですが、何より基礎的なものに集中しております。
また、実際に計算させるので、これをやり込むだけで電磁気の数学については相当練達するはずです。

電位の積分計算とか、意外に教科書だけ読んでも実際の問題で導き出せなかったりします。(少なくとも僕は悩んだことがありました)
そういう計算についても例題でしっかりとやってくれるので安心です。

また、gradやdiv, rotなど、電磁気を最初にやってつまづきそうな計算についても、超基礎的な問題が豊富にあるので、練習にはもってこいです。

例えば、
\begin{equation}
E(x, y, z) = (0, ky, 0)
\end{equation}
について、ベクトル場の発散を計算せよ。という問題などが羅列されております。
このような具体的な問題は、電磁気の教科書などにはあまり載っていないので、イマイチ使い方がわからないまま、数式が追えずに訳が分からなくなってしまうことがあるのですが、この本はそういう問題を回避できるように、電磁気に必要な実践的数学の使い方を教えてくれます

この本に載ってる電磁気学は分からなくとも、数学を学ぶ本として割り切ってやり込めば、相当基礎的な数学力が身につきます
最後の方のポアソン方程式の章では、球面調和関数についても載っていて、量子力学をやる際にしても、数式でつまづくという負荷を確実に軽減してくれます。

例解電磁気学演習 長岡洋介 (岩波書店)

この本は、先に紹介しました電磁気学Ⅰ・Ⅱの演習本といった感じで、丁寧に解説された例題が豊富です。
例題と、章末問題といった構成になっており、例題はチャートのようにすぐ下に解説が載っております。
初学者は、例題だけ徹底的に繰り返すだけで、かなりのアドバンテージがあると思います。

物理は、一つの問題設定を様々な視点で見ることで解釈の力が付くことが多いので、基礎的な問題を超深く解くというのは最初重要なのでは、と思うております。

また、基礎といったって、大学物理位複雑になってくると、メチャクチャ難しいわけで、この本といえど相当時間をかけないと理解も難しいです。

基礎問題をスルメイカのようにしゃぶり尽くすことで、相当度の深みが身につくと思いますので、この本はオススメです。
こいつは世話になったということで、スルメイカ本認定をしたいくらいです。

また、僕は学部四年の時、院試勉強のためこいつをやっておりました

否、この本のみやり倒しておりました。

僕は他大の院を受けたので、試験の前知識があまりない状態でしたが、何周もこの本をやった結果、電磁気学はこの本だけで院試を突破出来ましたので、院試対策としても良いと思います。

院試勉強の時は、僕は章末問題も全て解いておりました。この本を部分的には四回以上くらい解いておりますが、だいたい通しで3回くらいは解いていると思います。
難解な本を読むのも楽しくて良いのですが、まずは基礎を徹底させることが、挫折しないコツかなーと思いますので、この本を強く推しておきます。

 

オススメの勉強順序

  1. 電磁気学を学ぶためのベクトル解析を数学の本だと思って全てやる
  2. 電磁気学Ⅰを通しで全部もしくはわかる所まで読む
  3. 例解電磁気学演習で分かるところまでの例題だけ解く(時間ある人は章末もやってよい)
  4. 電磁気学Ⅱを1章ずつ読んで、例解電磁気学演習を解く

順序で言うと、上述の順番でやればかなり、良いと思います。
特に成功のカギを握っているのは、初学者にとっては1. をクリア出来るかどうかです。
1. の例題だけでも全て自分でやっておけば、電磁気学に関してはかなりのアドバンテージです。

数学をある程度把握したら、あとはやっと物理をやるだけです。
あとは、順番は正直どうでもよいと言いますか、数式さえ追えればあとはゆっくりやっていけば、進めはしますからね。
ただ、物理の理解という観点からは、演習問題を解いた方が良いと思います。
もっと良い方法として、実験をする、というのがあるのですが、これは多くの人が不可能なので、割愛します。

電磁気学の本筋だけやりたいという人は、コイルとか交流回路などは飛ばしてもよいと思います。
これは、マックスウェル方程式の成り立ちに、直接関係はなく、応用の部分だからです。

兎にも角にも1.のみ頑張れば、あとはかなり道が開けてきます。
皆で電磁気学をがんばりましょう!

その他、アナログ回路などの本もまとめようと思ったのですが、思いの外長くなったので、次回に回そうと思います。