回路技術

コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)の動作検証と本にあまり載っていない解釈【1】:2SC1815を使ったLTSpiceシミュレーション

アナログ回路勉強における究極の初見殺し、コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)

僕はこの回路を使う意味に悩まされ、ネットの情報を漁るも多くは電圧増幅率がおよそ1であるということやインピーダンス変換やらと書いてあり、「増幅率が1?つかえねーじゃん…インピーダンス?はー….↓」状態であった。

エミッタ接地は、増幅するということで、中身はわからなくとも、回路の必要性や意味をなんとなく感じることが出来る。

しかし、ことエミッタフォロワに関しては、電圧増幅の観点からは、ほほ1であるし、何のためにあるのか意味不明な回路である。

実際の回路を調べてみようと思うてネットの海を彷徨うてみても、いきなり難しい回路に行きあたって、「は?初心者には無理やろ」となり、そっとページを閉じるのだ。

このコレクタ接地回路の動作に関して、ようやく納得できる解釈を学びましたので、ここに一つの感動をもって記すことにします。

エミッタフォロワに泣いていた人々よ、しかと見て欲しい!!!

コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)のシミュレーションと実験

コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)の回路図

コレクタ接地(エミッタフォロワ)回路図図1 コレクタ接地(エミッタフォロワ)回路図

上に描きました図1が、魔のエミッタフォロワの簡単な回路図です。

適当にsin波(+直流)を入力して、エミッタ側で出力を取り出します。
エミッタ接地だと、コレクタ側から出力を取り出しましたが、エミッタフォロワでは、エミッタ側であるということが重要です。

負荷という物の考え方については、エミッタ接地の時にやりました。
少し触れておきますと、負荷を繋いだとしても、出力の電圧は不変である必要があります。
R2の値が変わっても、Outputは同じであるということを意味しています。

これだけ聞くと、なんのこっちゃわからないかもしれませんので、負荷について知りたい方は、以下の定電流回路の記事を見て頂ければと思います。

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コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)の回路解析

図1をもとに、エミッタフォロワの回路の動きを考えてみましょう。

解析は簡単ですが、回路の解釈にあたる部分ですので、ここが一番重要です。

入力電圧はベースにあり、出力はエミッタ側にあります。
エミッタ接地ですと、出力がコレクタ側にありましたので、見た目的にはエミッタ接地と似た回路になっております。

この出力電圧を求めてみると、

\begin{align}
V_{\rm out} = V_{\rm in} – V_{\rm BE} = \color{red}{\rm 定数} \tag{1}
\end{align}

となります。
あまりに重要なので、定数の文字を赤くしました。
定数なので、この値は基本的に変わらないということです
\(V_{\rm BE} = 0.7\)ですから、入力電圧より0.7 Vだけずれた波形ということになり、増幅はほとんどしていないことがわかります。

また、R1にも負荷抵抗R2にも同じ電圧がかかります。

負荷に流れる電流を計算してみましょう。

\begin{align}
I_{\rm 2} = \frac{V_{\rm in} – V_{\rm BE}}{R{\rm 2}}  \tag{2}
\end{align}

分子は先に求めたように定数ですので、負荷を変えると流れる電流値が変わることになります。
これが、エミッタフォロワの超重要性質でして、負荷を変えると、出力電圧\(V_{\rm out} \)を一定にするべく電流値が変化するのです。

コレクタ接地(エミッタフォロワ)の振る舞い図2 コレクタ接地(エミッタフォロワ)の振る舞い

この二つの性質をまとめてみましょう。

エミッタフォロワの2つの性質

1. 入力電圧と出力電圧の増幅率はほぼ1であり、波形にほとんど変化はない。
2. 負荷を変えると出力電圧を変化させずに、流れる電流の値を変えることが出来る

この2.の性質のおかげで、電流値がある程度自由に変えられるということになります。
すると、確かに出力にインピーダンスは変わるだろうなぁ、ということがわかります。

つまり、エミッタフォロワのインピーダンス変換の性質の根源は、この電流を変化させることが出来るという事に端を発しているのです。

LTspiceによるシミュレーション

シミュレーションに使う回路図と命令

実際に回路を考えて、LTspiceでシミュレーションしてみましょう。
上に示す図3の回路定数で計算させます。

今回は、\(V_{\rm in} = 2 + \sin (2\pi\times10t)\)を印加します。
すなわち、直流成分が2 V、振幅は1 V、周波数f = 10 Hzの波です。
負荷抵抗である、R2は値を変えても出力電圧に変化がないかを確かめるため、変数XRとしています。
LTspiceではパラメータを同時に変えながら、計算させることが出来るのです。
今回は、1kΩ、10kΩ、100kΩとしてみました。
この命令が、一つ目の.step param XR list 1k 10k 100k です。

10 Hzなので0.1 sで一周期となります。
というわけで、少し長めにとって0.5 sの間、計算させることにします。
この命令が.tran 0.5s です。

.tranと.stepの詳しい命令の設定方法は、以下の記事で紹介しています。

.tranの設定が載っている記事

 

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シミュレーション結果

さて、まずは入力と出力の計算結果です(以下図4)。
予想通り、入力から\(V_{\rm BE}\)(0.8 V程度)分だけ減った電圧が出力に現れました。
0.8 V下がっただけなので、電圧の増幅率はほぼ1。

入力と出力の波形図4 入力と出力の波形

 

一方で、次に負荷抵抗にかかる電圧と電流の振る舞いを見てみましょう。
負荷の抵抗を、1k , 10k, 100kと3パターン変えて計算させています。
図5の左は出力の電圧を示していますが、グラフは重なっており、抵抗を変えても結果に変化はありません。
一方右図は、負荷に流れる電流を表していますが、抵抗を変えると流れる電流が変わっていることがわかります。

このようにして、電流値がトランジスタの増幅率の範囲内で自由に変化しうることが、エミッタフォロワの能力なのであり、最大の利点であります。

負荷にかかる電圧と電流 (1k, 10k, 100k)図5 負荷にかかる電圧と電流 (1k, 10k, 100k)

 

実際に実験もしたいところですが、後にオペアンプを作成する記事で合わせてやろうかなーと考えております。

閑話休題 社会において技術を学ぶこととは?

理系が世の中には重要だ!と言われている昨今、如何にも理系の需要があるかのように吹聴されています。(確かに需要はあるのだけれど)
けれど、学ぶ方にとってしてみると、短時間で深く理系技術を習得することは難しいし、難解になればなるほど、周りに一緒にやる仲間も減ってくることでしょう。

そうなると、時には
「俺はいったい何をやっているんだ?」
といったような、問いが起こることがあるわけです。

分野も多岐に渡るし、当該分野の人が少なければ少ないほど、ひとりで悩むことも多いかもしれません。

また、より抽象度の高い技術ほど、学ぶのに精神力を使いましょう。

社会は高い能力を持った技術者が欲しいと言うけれど、その育成には、メンタル面も含めて何年もかかります。

現代のように、専門分化がかなり進んできた社会では、より分野横断的な能力が求められるという需要もわかりますが、その能力を確保するためには、我々は勉強せねばなりません。

そう、つまり、負担がマジパネーションなのです。
複雑な理系の技術をマスターするには、会社に行った後も、勉強が必須でしょうし、より高度なことをマスターしたい場合はプライベートを深く侵して勉強せねばなりません。

会社が終わってから、実験に必要な理論を学んだり、プログラミングを学んだり。。。

このような状況下で、社会の技術者はどうなるでしょう?

極端に技術好きな人や、人生の山あり谷ありの中で技術に対するモチベーションを失わなかった人が、突出した技術者になっていきます。
その結果、会社やその他の組織の中でも個々人における明確な技術格差が生じてしまうのです。

この現象はおそらく日本の組織の様々な場所で見受けられます。
状況がより進むと、技術が属人化して、「あの人だけが持ってるスキル」が多くなり、技術の伝達がスムーズに進みにくい可能性が出てきます。

このような状況を鑑みて、どのような方向性で生きていこうか?と、考える今日この頃であります。