アナログ回路の中では、花形部品のオペアンプ。
教科書にも多数取り扱われておりますが、理論だけ勉強をしてもイマイチ腑に落ちきらない。
そんなわけで、今回は、トランジスタを三つ使って、簡単なオペアンプを設計してみましたので実験やシミュレーション結果を載せようと思います。
目的は、皆がこのページだけ見て追随実験できるようになる、ということです。
是非みんなもやってみて感想とか、どうなったとか問題点など聞かせて頂きたく思います。
オペアンプというのは、初めて見た場合、トランジスタより簡単に思えますが、回路理論としてのオペアンプと実機のオペアンプには、想像で補いきれない余白がある、と感じております。
実際に、簡単なオペアンプを一回トランジスタで作ってみれば、色々重要な要素が含まれていて、なかなかどうして意義深いものだと思いました。
さて、具体的には、どういうものを設計すればいいの?ということになります。
それを順々に見ていきましょう。
目次
- オペアンプをトランジスタで作るってどういうこと?
- 3石オペアンプ回路の設計
- 3石オペアンプの回路解析(負帰還なし)
- 3石オペアンプのLTspiceシミュレーション
- 実験の様子および使用装置一覧
- 装置および部品一覧
- 実験の回路と事前準備
- 回路接続の仕方
- 1. ファンクションジェネレータとBNCケーブルの接続
- 2. BNC変換コネクタをオシロスコープに取り付ける
- 3. BNCケーブルをBNC変換コネクタに接続
- 4. プローブをBNC変換コネクタを接続
- 5. オシロスコープによる入力波の確認
- 6. GND端子をオシロスコープから取る
- 7. 回路にGND端子を接続
- 8. オシロスコープに測定用プローブを接続
- 9. 正負電源の+端子と-端子を回路に接続
- 10. プローブのGND端子を回路のGNDにまとめて接続
- 11. -入力プローブを回路に接続
- 12. 正負電源の電源を入れる
- 13. 測定用プローブをトランジスタのエミッタに接続
- 14. 出力波形の確認成功例
- 15. 全ての接続を終えた後の繋いだ後の全体像
- 実験結果
オペアンプをトランジスタで作るってどういうこと?
教科書等に載っている反転増幅回路
図1に載せているのは、どこにでも載っている反転増幅回路ですね。
この赤い丸でかこった、三角記号のオペアンプの中身をトランジスタで設計してみようというのが、今回の具体的な問題であります。
赤丸の部分をトランジスタで作成するには、2つのインプット(図1では+がGNDに接続されている)と1つのアウトプットがあります。
あとは、オペアンプを動かすための電源(三角の横側についている+と-)が必要です。
R1とR2は反転増幅回路に必要な抵抗なので、オペアンプの中身には関係ありません。
けれど、オペアンプというからには、実際に反転増幅回路を組んだら、そのようにふるまうはずです。
ですので、オペアンプの中身の回路を作ったあと、検証回路として反転増幅回路を使ってみましょう。
実際、非反転だろうが、なんだろうがいいのですが今回は反転増幅回路とします。
もし正しく動いた場合、
\begin{align}
V_{\rm out} = -\frac{R2}{R1} V_{\rm in}\tag{1}
\end{align}
に従うはずです。

ここまででわかった、必要な端子まとめてみましょう。
入力 | +と-の2つのVin |
---|---|
出力 | Vout一つ |
オペアンプ駆動電源 | +と-の2つ |
次に、オペアンプを満たすべき回路の仕様を徐々に考えていきます。
オペアンプになるための回路の性質は?
さて、このオペアンプが満たすべき性質について、反転増幅機をもとに考えてみましょう。
オペアンプ単体の動作について、以前記事を書きましたが、こいつの基本動作は、比較機である、ということを説明しました。

これは、2つの入力を比較して、値が大きい方をA倍して(符号に関しては成書か上の記事を見てください)、出力するというものです。
よく教科書などで、
\begin{align}
v_{\rm o} = A(v_{\rm 1} – v_{\rm 2})\tag{2}
\end{align}
とありますね。
このAが大きければ、大きいほど良いオペアンプだということになりますが、今回は細かいことは抜きにして、大きな増幅作用を持っとる、ということを把握します。
つまり、入力に対して大きな増幅作用を持つ回路が必要ということがわかりましたが、これをトランジスタでやるとなると、これまで散々やったエミッタ接地回路などが思い浮かぶことと思います。
さて、他に満たすべき要件があるはずですので、実際の製品からヒントを探しましょう。
流通しているオペアンプにみる設計の指針
次に、アナログデバイセズ社のLT1114という高性能オペアンプのデータシートを見てみます。
出典:LT1114のデータシート(アナログデバイセズ社)
このデータシートにある回路図(下の図2)を見てみますと、わけわからん回路は多々あるものの、2つの入力の直後に増幅回路である、差動増幅回路があります。(図2左の赤い囲い)
出力側には、電流は自由に変化させることが出来るが、電圧を一定に保つ性質を持つエミッタフォロア回路があります。(図2右の赤い囲い)
エミッタフォロアによって、電流を吸い込んだり(水色の矢印)、吐き出したり(ピンクの矢印)出来るというわけです。

難しい回路はさておき、増幅回路として差動増幅回路を選択し、直後にエミッタフォロアで電圧を制御すれば、オペアンプになるのでは?と考えました。
「1.増幅」の回路として、差動増幅回路を選択(下図3)。
「2.V一定」を満たすために、エミッタフォロアを使おうというわけです。
これまでやったエミッタフォロアやエミッタ増幅の考えだけを使って、作ってみましょう!


3石オペアンプ回路の設計
これまでの議論から、トランジスタによる差動増幅回路と、エミッタフォロワを組み合わせてオペアンプを設計しようということになりました。
トランジスタの差動増幅回路については、いずれそれだけで記事をまとめる予定ですが、簡単にその回路の振る舞いをまとめておきます。
差動増幅回路の定性的な特徴と実験における注意点

今回使う差動増幅回路の回路図を下の図4に示しています。
この回路は、これまで散々やったエミッタ接地回路の応用回路だということを示しておきましょう。すなわち、電圧を増幅させる回路なのです。
ベースにトランジスタをONにするための直流電圧が必要ない
以下の回路図を見て比較してみましょう。
左がエミッタ接地回路ですが、右の差動増幅はこのエミッタ接地回路を左右対称に重ね合わせたような形になっていることがわかります。
では、何が違うか?というと、エミッタ接地回路の場合入力の部分に、トランジスタをONにするための直流電圧が必須です。
大体、0.6 ~ 0.7 Vほどで、トランジスタがONしますが、エミッタ接地では増幅させたいVinとは別にこの直流電圧が必要なのです。
差動増幅回路にはどうやらこの直流がありません。
この理由は、一番下にある負電源のおかげで、マイナス側に電圧を下げてトランジスタをONにしています。
この電圧をマイナス側に引っ張ってトランジスタをONにするという考え方は、ベース接地回路でもやりましたね!
この効果のおかげで、差動増幅回路では、入力に直流電圧をいれる必要がなくなっております。


温度変化による\(I_{\rm C}\)の変化
さて、この差動増幅回路にはもう一つ考えておかねばならない特性があります。
エミッタ接地回路では、温度変化によるコレクタ電流の変化がデメリットとして挙げられていました。
この原因は、以下のダイオードの式から考えることが出来ます。
式(3)を見ると、エミッタ電流\(I_{\rm E}\)が温度Tに依存していることがわかります。
つまり、温度が変われば、エミッタ電流が変化するこということです。
\begin{equation}
I_E = I_{\rm S}( {\rm exp}{\frac{qV_{\rm BE}}{kT}} – 1) \tag{3}
\end{equation}
\(I_{\rm S}\) : 飽和電流
\(q\) : 素電荷 (\(1.602176 \times 10^{-19} \rm C\))
\(k\) : ボルツマン定数 (\(1.380648 \times 10^{-23} \rm JK^{-1}\))
\(T\) : 絶対温度
トランジスタが2つも使われていることから、この温度依存が、より問題になることが予想されます。
以下に、2SC1815のデータシートより、\(I_{\rm B} – V_{\rm BE}\)特性の結果を載せておきます(まさに式(3)を可視化したものです)。\(h_{\rm FE}\)倍すれば、\(I_{\rm C} – V_{\rm BE}\)特性にもなり、グラフ概形は変わらないはずです。(∵\(h_{\rm FE}\)は定数)
以下のグラフで重要なのは、温度が違えば、特性が全くことなることです。
つまり、二つのトランジスタの温度差はない方が好ましい、ということになります。

また、トランジスタの特性も同一のものでないと、誤差が生じる原因になることが予想されます。
ここで言う「特性が同一である」という言葉が指す意味は、2つのトランジスタにおいて、上に示すグラフの概形が同一であり、ぴたりと重なるということです。
このためには、全く同品種の製品はもとより、増幅率も同じものを使うのが好ましいでしょう。
同一製品でも性能にばらつきがあるの?と思われることがあるかもしれませんが、かなりの差があります。
データシートにもその記載があります。
赤線を引いた部分ですが、2SC1815-Oの増幅率は70~140の間である、という意味です。
ざっくりと、は分類されいるのですが、増幅率が、かなり異なっているということです。
これでは、コレクタ電流の値はずれ込んでしまうでしょう。

これを解消するべく、性能が同じものが対として売られています。
その名も、「マッチドペアトランジスタ」が、商品として売られているようです。
けれど、値段が高いのです。
故に、今回は、同じ商品を使って実験することにとどめています。
以上、実験における2つの注意点をまとめておきましょう。
2つのトランジスタは熱接触させ、温度差を極力減らす。
2つのトランジスタの特性を同一のものにする。
差動増幅回路の振る舞い(LTspiceシミュレーション)

ここまでで、既にかなり長くなって参りました笑。
差動増幅回路の細かいことは、差動増幅回路の記事に書くこととしますが、回路の振る舞いの結果だけは知っておかねば、オペアンプ回路作成の理解に差し障りが生じます。
そのため、どのように増幅するか?だけ、シミュレーションした回路と結果を載せておきます。
他の記事で、LTspiceのシミュレーションの仕方については、かなり述べている + ここでは本題ではないので、方法については言及なしで進みます。
肝心の結果ですが、-入力に印加したsin波に対して、Voutput2は約275倍の反転増幅していることがわかります。
基本的には、エミッタ接地増幅回路と同じように反転増幅するというものですね。
オペアンプにおいて、こいつを増幅回路として使います。

コレクタ接地回路(エミッタフォロア)

この回路は、初心者殺しな回路だと個人的には思っていて、最初の方は、意味がわかりませんでした。
わかってしまうと、簡単で、電流を変化させても出力の電圧を一定に保つ回路働きを持っています(増幅率はほぼ1なので、電圧はそのまま取り出せる)。この説明については、以前記事で取り扱ったので、そちらを参照ください。

差動増幅回路とコレクタ接地回路を合体させオペアンプへ
二つの回路を組み合わせると、差動増幅回路で、電圧を増幅させて出力を取り出し、コレクタ接地回路(エミッタフォロア)で出力を一定に保つ。
単純に差動増幅回路で増幅した電圧を入力にして、コレクタ接地回路に突っ込んだのが下の図です。
マイナス入力にsin波を入れている理由は、検証の時に、反転増幅回路を使用するからです。
反転増幅回路の回路図を見て頂くとわかるように+側はGND、-側に増幅させたい波をいれます。
その他の回路で検証したい場合は、以下の入力に従う必要は全くありません。

ささっと、繋いだ回路をお見せしましたが、ここまで来るのに、実際はだいぶ試行錯誤しております。
こいつの全体像を見てみますと、左側に増幅回路、右側で出力電圧を一定にする回路となっております。
コレクタ接地回路に負荷抵抗がついているのは、負荷をつけても、出力電圧が一定になることを確認するためです。
オペアンプの動作検証では、外側に色々抵抗やら繋ぐわけで、実際は何等かの抵抗値のあるものが繋がるわけです。
そいつらを繋いでも、出力を安定させる、というのが、エミッタフォロアであります。
色々繋いでも電圧が変化しないかわりに、右側のトランジスタが電流を引っ張ってきます。
これにより、出力に流れる電流は自由に変化しうるわけです。
ざっくりとですが、回路解析とシミュレーションしてみましょう!
3石オペアンプの回路解析(負帰還なし)

ざっくりと、設計に必要な回路解析をやってみます。
まず、左側の増幅回路部分を考えます。
この回路は左右対称なので、コレクタに流れる電流(\(R_{\rm C}\)に流れる電流)は同じとして、\(I_{\rm C}\)にします。
右側の\(I_{\rm C}\)は、コレクタ接地回路のベース電流として流れて行きそうですが、インピーダンスが高いため、ほぼそのまま分岐せず、下に流れて行きます。
その結果、
\begin{align}
I_{\rm E} = 2I_{\rm C} \tag{4}
\end{align}
となります。
また、トランジスタがONの場合、\(V_{\rm E} = -0.7\)で固定値を取ります。
これはトランジスタがONになると、\(V_{\rm BE}\)が0.6 ~ 0.7 Vになるからで、一定値をとります。
VCCが定まれば、\(R_{\rm E}\)に流れる電流\(I_{\rm E}\)が分かるというわけです。
\begin{equation}
I_{\rm E} = \frac{VCC – 0.7}{R_{\rm E}}\tag{5}
\end{equation}
となります。
式(4)から\(I_{\rm C}\)も求まります。
ここまでわかると、\(V_{\rm OUT}\)も計算できます。
差動増幅の出力から、\(V_{\rm BE}\)下がったのが、\(V_{\rm OUT}\)です。
つまり、コレクタ接地回路では、直流成分が、0.6 ~ 0.7 V低下するだけということです。
\begin{equation}
V_{\rm OUT} = VCC – R_{\rm E}I_{\rm C} – V_{\rm BE}\tag{6}
\end{equation}
式(6)が0あたりになるように設計しないと、直流成分が乗ってしまいます。
波の場合は、振動する中心をこの式から求めるのです。
3石オペアンプのLTspiceシミュレーション
負帰還抵抗なしの回路でシミュレーション
これは、まんまオペアンプの中身の回路で、基本的には増幅回路になっていることは先ほど説明しました。
右端に100 kΩの負荷抵抗も付け、outputが変動しないことを確認します。

-入力と、Voutputの波形を図示しますと以下のようになります。
電圧幅を見てみますと、入力の振幅が1 mVに対し、出力は240 mVあたりになっているので、約240倍の増幅をしていることがわかります。
これだけ増幅していれば、とりあえず、オペアンプとして動くはずだと信じて実験してみましょう。
差動増幅回路の増幅率の計算ですが、実験とかシミュレーションに合うような解析はかなり難しく、教科書にちょろっと載ってるような計算で合った試しがありません。
その理由が、まず増幅率にばらつきがあること。
さらに、完全に揃えたとしても、まず増幅率の値を実験的に出さないといけないこと。
これらをクリアしてかつ、さらにトランジスタの入力抵抗も考慮に入れて、計算しないとなりません。
一応、解析解も出したので、付録として載せておきます。
いずれ実験に合うように、修正した理論を提唱できればと思っています。

負帰還あり(ボルテージフォロワ)の回路シミュレーション
帰還というのは、出力を入力側に戻すことを指しており、これにより、雑音の低下、回路安定性の向上など、様々な利点があります。(成書参考)
今は負帰還をメインに実験しているわけではないので、ざっくりとだけ書いていきます。
負帰還の中でも、抵抗も何もつけず、出力を直接-入力に繋ぐ回路をボルテージフォロワと言います。
出力をそのまま、入力に戻すので、増幅率は1倍(同じ波形が入る)です。
負帰還回路では、2つの重要な性質があります。
1. 両入力端子に電流が流れない
2. 負帰還回路の場合+入力と-入力の電位差が0
これは、オペアンプの最も簡単な回路なので、まず、この回路でオペアンプとして動いているか確認します。
下のグラフを見ますと、+入力とVoutputがほぼ同じグラフ概形をしていますね。
なので、きちりとボルテージフォロワとして、動作していることが確認出来ました。


負帰還あり(反転増幅回路)のシミュレーション
負帰還回路の中でも、反転増幅回路になるように、Voutputから-入力に帰還抵抗を繋ぎ、さらにR8を繋ぎました。
これによって、先に描きました、図~の反転回路と同じ回路になっています。
式(1)から-5倍の増幅をするはずです。

図~に-入力とVoutputの波形を見てみましょう。
オフセットは少しずれていますが、入力の振幅は100 mVに対し、出力は約500 mVになっており、5倍になっていることがわかります。
また、波形も反転していることから、きちりとマイナスが掛け算されていることがわかります。
ということで、とりあえず、どうやら上の回路でオペアンプになるということが確認出来ました。
差動増幅回路自体の振る舞いや、オペアンプ自体の振る舞いには、多くの疑問が残ることと思いますが、全てを説明しきるには、かなりの量になってしまいますので、個別に書く予定です。

実験の様子および使用装置一覧
装置および部品一覧
セット購入の部分ですが、よく使う部品がいっしょくたにまとめられて売っているセットがあるので、それを買った方が楽だと思います。
たぬし氏はOsoyooの電子工作部品セット(2080円)を使っています。
装置がそろっている場合は、2680円で実験できます。
部品 | 会社・型番 | 値段 |
オシロスコープ | RIGOL DS1054Z | 55944円 |
ファンクションジェネレーター | RIGOL DG1022A | 45862円 |
直流安定化電源 × 2 | YaeCCC MS305-D | 5900円 × 2 |
デジタルマルチメーター(テスター) | 三和 PC7000 | 24641円 |
装置の合計金額 | 138247円 | |
フレッドボード | 秋月電子 BB-2T2B | 600円 |
680Ω抵抗 × 1 | ||
1 kΩ抵抗 × 3 | セット価格(2080円) | |
2kΩ抵抗 × 4 | セット価格 | |
5.1kΩ抵抗 × 1 | ||
NPNトランジスタ × 3 | Toshiba社 2SC1815 | セット価格 |
部品の合計金額 | 2680円 |
実験の回路と事前準備
実際の実験の回路を図19に載せています。
部品を使い回していますので、割とよれよれしていますが、そこはご愛嬌!
図17の回路図通りに部品を繋ぎ合わせます。
4 kの抵抗はなかったので、2 Ω抵抗2本を直列にしています。
5 kの抵抗もなかったので、5.1 k抵抗1本で置き換えています。
この部分は、増幅率に関係する帰還抵抗なので少しずれてもいいかなーと考えました。
本当に精度良く実験するならば、トランジスタは、さきに述べたように特性がマッチしたものを使わなければなりません。
しかし、今回の実験では、増幅率の近しいものを選別して使用するなどのことは行っておりません。
余裕ができたら、いずれ行おうと思っております。
+15 Vと-15 Vは直流安定化電源2つを繋いで、作成しています。
以前の記事で、直流安定化電源2つを使った正負電源の作り方を説明していますので、それを参照にしてください。
実際今回の実験でも、使っています。

-入力は、ファンクションジェネレータ(RIGOLDG1022A)を使って入力しています。
その方法は、回路接続の仕方の項で説明します。
+入力は、0 Vなので直接GNDに接続しています。

ファンクションジェネレータの設定も載せておきます(図20も参照)。
VPPは、波形のトップとボトムの差なので、振幅100 mVにするには、VPP = 200 mVにします。
f = 10 Hz
VPP = 200 mV

さて、これで、ファンクションジェネレータと出来上がった回路、正負電源の3つの準備が揃いましたので、これらを接続してみましょう!
回路接続の仕方
自分が実験する際に、最初の頃一番困ったのが、回路図はあるけど、どうやって繋いだらええのん?わいちゃん装置使ったことないし、、、ということでした。
1個わからないところが、あると実験さえ出来ないので、ここは少し細かく載せておきます。(是非みんなに追従実験して欲しいです。)
まずは、必要な装置とモノを写真で図21に載せておきます。
測定装置は、オシロスコープ、ファンクションジェネレータと直流安定化電源2つです。
直流安定化電は、既に正負電源の接続を終えています。
正負電源接続の方法は、上の方で述べましたね!(以前に詳しく載せた記事がありますので参考にしてください)
小物として、プローブ2本。
1本は、測定用、もう一つはファンクションジェネレータを介して-入力を回路に入力するために使います。
BNCケーブルは、ファンクションジェネレータとオシロスコープを繋ぐのに使います。
実際に狙った出力が出ているか、オシロスコープで確認出来ます。
あとは、ブレッドボードで作った回路!

1. ファンクションジェネレータとBNCケーブルの接続
まず、BNCケーブルをファンクションジェネレータのCH1に繋ぎます。
しかし、ファンクションジェネレータからこのBNCケーブルからオシロスコープに直接繋いだとしても、どうやって実験回路に波を入力させるのだろう?と手詰まりになります。(僕はそうなりました)
そこで、次にあげるBNC変換コネクタを使うのです。

2. BNC変換コネクタをオシロスコープに取り付ける
次に、BNC変換コネクタをオシロスコープのCH1に取り付けます。
これは、何のためにあるかと言いますと、CH1に2つのプローブを同時に取り付けることが可能となります。

1つはファンクションジェネレータのBNCケーブルから接続し、もう一つはプローブを繋ぎます。
片方は、実験で印可する-入力として使うのです。

3. BNCケーブルをBNC変換コネクタに接続
件のBNCケーブルの片側に、BNCケーブルを接続します。
これはどちら側に刺しても大丈夫です。
このケーブル接続により、オシロスコープに入力波を送ります。
もう片側にプローブを繋げば、そちらにもファンクションジェネレータからの信号が入ってきていますので、これを実験回路に入力することができるというわけです。

4. プローブをBNC変換コネクタを接続
次に、BNC変換コネクタのもう片側へプローブを接続します。
このプローブを回路の入力に使うのです。
さて、ここまで成功しているかどうかを確かめるため、オシロスコープとファンクションジェネレータの電源をONにして確認してみましょう。
プローブのもう片側は何に使うのかというと、GNDに繋ぎます。
これは、後ほどまとめてやります。

5. オシロスコープによる入力波の確認
上述しましたように、f = 10 Hz、VPP = 200 mVの波に設定します。
(写真では100 mVPPになっていますが、間違いです!みなさんは200 mVにセットしてくださいb)
ファンクションジェネレータ側のCH1の右側にある、Outputを押さないと波形が送られませんので、注意してください。
初めて使った時、地味に悩みました笑
オシロスコープのCH1にきちりと正弦波がきちりと出ていればここまでは成功です!

6. GND端子をオシロスコープから取る
実験においては、非常に重要なGNDですが、今回はオシロスコープに付属のGND端子を使ってみましょう!(多くのオシロスコープに、最初からある機能として備わっております)
正負電源のGNDもここから取ってきています。(図28 赤色)
ワニ口クリップをGND端子に繋ぎます。(図28 緑色)

7. 回路にGND端子を接続
さて、このGND端子を使うために、回路のマイナス側に繋いでおきます。
そうすることによって、ブレッドボード上のこのラインは全てGND端子として使えます。

8. オシロスコープに測定用プローブを接続
さて、GNDの話はひとまず置いておき、次に測定用プローブをオシロスコープのCH2に接続します。
こいつは、実際に出力を確認したりする時に使います。

9. 正負電源の+端子と-端子を回路に接続
次に、直流安定化電源で作成した正負電源を回路に接続します。
これにより、+15 Vと -15 Vを独立に供給できるというわけです。
僕が作った正負電源と同じ作り方をしていれば、赤が+黒が-になっているはずです。

10. プローブのGND端子を回路のGNDにまとめて接続
先ほど、作ったGNDのラインにオレンジのワイヤーを繋いで引き出し、こいつのプローブのGNDを繋いでおきます。
これをやらないと、波形がグチャグチャになったりして実験どころの騒ぎではないので、絶対に必要です。
このGNDは先ほど繋いだ通り、オシロスコープのGNDへ繋がっているのです。

11. -入力プローブを回路に接続
オペアンプの-入力となるプローブを回路に接続します。
これで、波の印可が出来るはずですが、だいたい最初からうまくいくことがありません。
ここら辺は、こなした数に比例するのだと思います。
余談は、さておき、これで接続は終了!いよいよ正負電源の電源を投入しましょう!

12. 正負電源の電源を入れる
正負電源の電源をONにします。
正負電源の値が少しずれていますが、実際の実験では、出来る限り合わせておきます。
この電源投入は、最初は小さい値からしておいたほうが良いと思います。

回路を繋ぎ間違えていたりすると、いきなり、ばちんと行くこともありますので、注意してください
13. 測定用プローブをトランジスタのエミッタに接続
ついに、出力の測定を開始出来る段階です。
出力を取り出すワイヤーとかを繋いでも良いのですが、今回は、トランジスタのエミッタ側に直接プローブを繋ぎました。
出力が取れる部分はいろいろあると思うので、抵抗とか好きな場所に繋いでください。
けれど、ショートには気をつけて下さい!
僕は一回ショートさせて、火花を散らしました笑

14. 出力波形の確認成功例
成功すると、5倍程度の反転増幅画像が出てくるはずです。
今回は、100 mVPP出の画像なんで、シミュレーションと値が違いますが、みなさんも色々試して見てください。

15. 全ての接続を終えた後の繋いだ後の全体像
ここまで順番に説明してきましたが、全ての接続を終えた時のカオスな全体画像を載せておきます。
これは、上述してきた時と違う日にやったので、セッティングが微妙に違いますが、繋いである方法は全く同じです。

実験結果
交流成分の実験結果
前置きがかなり長くなりましたが、やっと実験結果です。
1CHの黄色が出力波形、2CH青が-入力の波形を図38に示しています。
(これは実験をやったのが別の日なので、上のセッティングと逆になっているので注意です!)
縦軸の倍率(スケール)が違うので、それを明示しております。
CH1は200 mVスケール、CH2は50 mVスケールになっていますので同じくらいの電圧に表示されている場合、4倍黄色のほうの縦軸が大きいことになります。
下の図は縦軸の電圧幅は、表示上ほぼ同じくらいに見えますので、約4倍の増幅をしていることがわかります。
さらに、波形が反転していますので、反転増幅回路になっていることが伺えますね!
では、実際どれほど増幅しているかを精密に測定してみましょう。

CH1の出力波形を単体でよくよく見てみると、波形の線幅が結構太いことがわかります。
これは、何故こうなるのかわかりませんが、最初はもっと太いものでした。
そのため、正確なVPPがわからないという問題があります。

ということで、まずは線幅を算出すべく、カーソル機能を使って、太さを測定してみます。
図40から太さは、
\begin{equation}
太さ = (840 – 732) / 2 = 54 (\rm mV) \tag{7}
\end{equation}
計算の結果、この太さには54 mVも幅があるということです。
図40左と右を比べればわかりますが、測定結果に最大で108 mVもの差が生じることになります。

この太い幅のどこかに正確な測定点があるはずですが、どこかは不明なので、この太さの半分を足した点を測定点とします。
つまり、732 mV + 54 mV = 784 mVを出力波形のVPPとしましょう。
一応の確認として、横軸(時間)の一周期も測定しましたが、9.881 Hzで、およそ10 Hzであるということがわかりました。
反転増幅回路では、理論的にも周波数は変わらないはずなので、印加した10 Hzの波とほぼ同じ、と考えて良いと思われます。
次に、CH2の波形も同様に単体で見て、値を測定してみましょう。
ファンクションジェネレータの方は、入力する時に、値を設定しているのだから、わざわざ測定する必要はない、と考えるかもしれません。
しかし、厳密にはファンクションジェネレータで入力した波形もオシロスコープに繋ぐことで、微妙に減衰している可能性があります。
その理由は、色々な装置やワイヤーに繋いでいるので、ごくわずかとはいえ、抵抗値を持つためです。

この波形は、特に謎の太さ、は存在しておらず、普通に測定すればよいでしょう。
VPP = 201 mV、 f = 10 Hzという結果なので、ほぼ実際の入力と変化なしですね。
カーソルは手動なので、厳密な測定かどうか、という点については微妙なのですが、今回のような実験ではほぼ関係ないと見てよいと思われます。
後々、より精密な測定が必要となる可能性があるので、日々の実験から精度に対する勘を磨いておいてよいのかなと思っております。
早速増幅率を出してみると、
\begin{equation}
増幅率 = 786 / 201 = 3.91\tag{8}
\end{equation}
3.91倍という結果が算出されました。
およそ4倍なので、予想していた5倍の増幅からは減衰しています。
この原因はどこからくるのかは、精密に調べないとわかりませんが、まず、特性が完全に同一なトランジスタを使っていないことは間違いなく問題でしょう。
逆にいえば、完全に特性がマッチしていなくとも、オペアンプとして動作はするということです。
さて、ここまで書くのに、死ぬほど時間がかかったわけですが、あまりにかかりましたので、とりあえずアップすることにしました笑
もうね、相当かかりますね、、、、100%の記事より60%でもアウトプット、、、の方が、重要かなと。
その他の部分は、現在解析中にて、随時アップさせて頂きます。
直流成分の実験結果
現在解析中!!!!