回路技術

NPNトランジスタ(2SC1815)によるエミッタ接地回路【2】:設計と実験およびLTSpiceによるシミュレーション(固定バイアス回路)

たぬしです。

エミッタ接地回路1の続き記事です!

電子回路やはり難しいなぁ。
教科書とか読むだけじゃ、アナログ回路は身につかない気がしております。
最近、教科書読んでも実験の全体を設計できるようにならない、ということを学びました
しかし、回路の動作を把握すべく行う回路解析は、必須の作業なので、実験しつつその回路の解析をやるのが良いと思った次第であります。

前回の実験を反省し、今回は先に、回路解析をして、扱う抵抗値を決めた後にシミュレーションを行い、最後に回路実験という流れにしたいと思います。

エミッタ接地回路(固定バイアス回路)

今回の回路は図1に示す、簡単なエミッタ接地回路。\(V_{CC}\)の電圧を抵抗で制御し、ベースにトランジスタが動作するに必要な電流を流す設計を考えてみます。

エミッタ接地回路図1 エミッタ接地回路 (固定バイアス回路)

どうやって、\(R_{L}\)と\(R_{B}\)の値を決めるのかがわからず、最初は\(R_{B}\) = \(R_{B}\) = 10 K \(\Omega\)で実験しました。
その結果ひどいことになり、きちりと設計してから実験するべきだという結論に至っております。
けれど、無駄に思えた実験も決して意味がなかったわけじゃなく、設計するのに何が重要なのか?、ということが少しわかったので、それを書いていこうと思います。
まずは、これまでまじで意味不明だと思って読み流していた、トランジスタの静特性のグラフを最初に見るべきである!ということです。
その明確な順番を以下に示しますが、色々本を調べたりして自分なりに得た結果なので、最適解なのかはわからない、ということを付記しておきます。
あくまで勉強段階であります。

トランジスタの静特性を見てベース電流とエミッタ・コレクタ間電圧を決める

トランジスタの静特性図2 トランジスタ(2SC1815)の静特性

まず、自分が使うトランジスタ(今回は2SC1815)の静特性をメーカーのホームページ等からダウンロードしてみましょう。
Googleで2SC1815と検索したら、データシートが一番上に出てきたので貼っておきます。→ http://akizukidenshi.com/download/2sc1815-y.pdf

図2は横軸がコレクタ・エミッタ間電圧、縦軸がコレクタ電流を示しています。
僕は、つい一か月前まではこのグラフは全くピンと来ませんでした。
前回の実験でコレクタ・エミッタ間電圧を測定したことで、トランジスタの動作の実感が少し湧くようになり、このグラフを理解せねばならん!という風になったので、まずは測定してみるという選択肢もありな気もしています。

\(I_{B} = 0.2 mA\)の時をみると、コレクタ・エミッタ間電圧\(V_{CE}\)が大体0.2 V 位までコレクタ電流\(I_{C}\)は大きく立ち上がり、その後だいたい30 mA位で飽和しています。
このことでまず、重要なのが、\(V_{CE}\)が0.2 V以上でないとコレクタ電流が増幅しきらない、ということです。
そのため、コレクタ・エミッタ間電圧を設計する必要があります。

次に、\(I_{B}\)が1.0 mAより大きい値の曲線に着目すると、たとえば\(I_{B} = 3.0 mA\) などは、コレクタ・エミッタ間電圧が変われば、コレクタ電流も大きく変化する、というグラフになっています。
これは、超精密に\(V_{CE}\)を制御しないと、すぐにコレクタ電流の値が変わってしまう、ということを示しております。
よって、グラフを見て、\(V_{CE}\)が変化しても、コレクタ電流があまり変化しないような、曲線を選んだほうが良いということになると考えられます。
具体的には、ベース電流は、0.5 mA以下がよさそうですね。

今回は、ベース電流が0.2 mAになるように設計するとしてみましょう。
次にコレクタ・エミッタ間電圧を決定します。
\(I_{B} = 0.2 mA\)の曲線を見ると、少なくとも0.5 V ~ 5 Vくらいまではコレクタ電流に大きな変化はありません。
なので、電源\(V_{CC}\)を5 Vとすると、中間の2.5 Vあたりを選んでおけば、仮に\(V_{CE}\)が多少変動しても、コレクタ電流に変化はないので、良さそうに思えます。
グラフから、大雑把に読むと\(I_{C} = 30\) mA位とわかるので、\(I_C = h_{\rm {FE}}I_B\)に代入すると、\(h_{\rm {FE}} = 150\)となります。(実際は、製品ごとに個体差があるのでおおよその値です!)

ベース電流の決定図3 ベース電流の決定

ベース電流を決めれば、自動的に\(I_C = h_{\rm {FE}}I_B\)で決まるしグラフからも読み取れるので、ここでは、ベース電流とコレクタ・エミッタ間電圧が設計すべきパラメータとなります。

回路解析による抵抗値の決定

回路解析を行い、抵抗値の値を決定しましょう!。
まずは、トランジスタの静特性に出てきた重要なパラメータ\(V_{\rm {CE}}\)と\(I_{\rm C}\)を導出してみます。

\begin{align}
I_B = \frac{V_{CC} – V_{BE}}{R_B}  \tag{1}\\
I_C = h_{\rm {FE}}I_B      \tag{2} \\  
\end{align}

(2)に(1)を代入すると、

\begin{align}
I_C = \frac{h_{\rm {FE}}(V_{CC} – V_{BE})}{R_B} \tag{3}
\end{align}

となります。次にグランドとエミッタ間の電圧\(V_{\rm {CE}}\)を求めます。
\begin{align}
V_{CE} = V_{CC}  – R_LI_C = V_{CC}  – \frac{R_Lh_{\rm {FE}}(V_{CC} – V_{BE})}{R_B} \tag{4}
\end{align}

さて、今回は\(V_{CC} = 5\) V, \(I_{B} = 0.2\) mA, \(V_{CE} = 2.5\) V, \(I_{C} = 30\) mAを用いて二つの抵抗を求めてみます。
式(4)から、

\begin{align}
2.5 = 5 – R_L \times 30 \times 10^{-3} \\
R_L = 83.3 \Omega
\end{align}

ここで、トランジスタがきちりと駆動した場合は、\(V_{BE}\)はダイオードの性質から0.6 ~ 0.7 Vと定電圧になるので、ここでは 0.6 Vとします。
(1)式から、

\begin{align}
0.2 \times 10^{-3} = \frac{5 – 0.6}{R_B} \\
R_B = 22 K\Omega
\end{align}

これですべてのパラメータが求まった!まとめておくと、トランジスタの静特性のグラフから

  • コレクタ・エミッタ間電圧を変化させてもコレクタ電流の変化が小さい部分を見つける
  • \(I_{B}\)を決める
  • \(V_{CE}\)を決める→\(V_{CC}\)をグラフから決める
  • 回路解析を行い、抵抗値を決める

という順序を踏みました。

直流負荷線を描いて、グラフから\(R_{L}\)を決定する方法

図1を見るとわかりやすいのだけど、\(V_{CE}\)は\(R_{L}\)だけで決まっております。
\(R_{L}\)が0ならば、、\(V_{CE} = V_{CC}\)になるし、逆に\(R_{L}\)を滅茶苦茶大きくすれば、\(V_{CE}\)が小さくなることは想像がつきます。

ここで、超重要なのは、式(4)を見てもわかるように、\(R_{L}\)を変えることで、\(V_{CE}\)が変わってしまうということ!
これを理解して、やっと教科書にやたら載ってる直流負荷線の意味が少しわかりました。
また、この\(V_{CE}\)の値は、トランジスタ自体の増幅効果とは無関係に決まる、ということも明記しておきたい点であります。
トランジスタは静特性のグラフにあるように、直線のグラフではなく、曲線を描きます。
しかし、抵抗と電圧の関係は単純な比例の式なので、直線になるはずなのです。

故に、二つの素子は全く独立の振る舞いをします。トランジスタの挙動は定まっているので、変化させることができる抵抗値を変えて、合わせこむというのが直流負荷線のイメージだと思います。
さっき使った、トランジスタの静特性のグラフにこの\(R_{L}\)の挙動を足していきます。

  1. \(V_{CE} = 0\)、\(I_{C} = 0\)の点に点を打つ. \(V_{CE} = 0\)が0の時は、実際にはない状態だけれど、抵抗による電圧降下がないので、\(V_{CE} = V_{CC}\).
  2. 今回は、ベース電流0.2 mA、コレクタ・エミッタ間電圧を2.5 Vで駆動させるので、そこに点を打つ(図4の赤丸)
  3. 二つの点を通るように直線を引く(図4の赤線)
  4. 3. で引いた直線の傾きから\(R_{L}\)を出す

これらが、直流負荷線を描くまでのプロセスであります。
次に、4.を解説します。
横軸5 Vの変化に対して、縦軸の変化はおよそ60 mA程度です。
オームの法則RI = V から、 \(R \Delta I = \Delta V\)なので、
\begin{align}
R = \frac{5}{60 \times 10^{-3}} \simeq 83 
\end{align}

これより、回路解析で行った結果と、負荷線からの抵抗値は同じ結果を得ました。

直流負荷線図4 直流負荷線の描き方

LTSpiceによるシミュレーション結果

シミュレーションの設定方法は、前回と全く回路が同じなので、割愛します。
前回の記事にその設定方法と注意点が載っているので設定の仕方がわからない場合は見てもらえればと思います。
NPNトランジスタ(2SC1815)によるエミッタ接地回路の挙動を実験とLTSpiceで確かめる(1)(失敗実験( ^ω^))

シミュレーション結果ですが、まずは抵抗の電圧から見てみましょう。
5 Vの時の値を読み取ると、それぞれ\(R_{L}\)の電圧は2.76 V、\(R_{B}\)の電圧は4.22 Vです。
回路解析および設計から出した電圧と比べてみると、\(R_{L}\)にかかる電圧は2.5 Vに設定したので、誤差は10.4 %。
\(R_{B}\)にかかる電圧は 5 – 0.6 = 4.4 V位だと割り出したので、誤差4.2 %。
しかし、0.6 Vはこの製品のダイオードの特性表などから持ってきた値ではないから、上記の誤差にはあまり意味ないかもしれません。
とはいえ、トランジスタの増幅率や、抵抗の値にそれなりにばらつきがあることを考慮すれば、そこまで悪くはない値ですね!

抵抗にかかる電圧の入力電圧依存性図5 抵抗にかかる電圧の入力電圧依存性

 

次に、ベース電流\(I_{B}\)、コレクタ電流\(I_{C}\)の入力電圧依存性(左)と、それぞれの拡大図(右)です。
シミュレーションから、確かにベース電流が滅茶苦茶増幅されている様が図6 左図から見て取れます。
計算すると、増幅率はおよし173倍!それぞれにどれ位の電流が流れていたかというと、右図で大体わかります。
今回実験する5 Vの時の値を調べてみると、\(I_{C} = 33.14\) mA, \(I_{B}\) = 191.25 \(\mu\)Aとなりました。

ベース電流とコレクタ電流の入力電圧依存性図6 ベース電流とコレクタ電流の入力電圧依存性

最後に、トランジスタの各端子間の電圧の入力電圧依存性を示すグラフです。
0.67 Vを境に、全ての端子間電圧が一挙に変動しました。(図中点線にて示す)
エミッタ・ベース間電圧は、入力電圧が5 Vの時、0.79 Vになっておりました。

ベースとエミッタの間は、ほとんどダイオードの順方向側に電圧をかけた状態とみなしてよいです
ダイオードは、順方向に電流をかけた際も、電位障壁(n形p形の半導体をくっつけた時に生じる電位差)を突破するのに、0.6 V位必要です。
ここらへんは、ほかの記事で取り上げて、トランジスタの中身、みたいなことをいずれ書こうかなと思っております。
けど、どんどん原理に遡ると、回路を学ぶこととかけ離れてくるという罠があるから、ここらへんでとどめておきます。

C-B間電圧の挙動は学んだことないんだけど、何で規定されているのか深く考えたことがまだありません。
なので、振る舞いについて何も言及できないのだけど、今後の課題です。

E-C間電圧は、回路解析でわかったけれど、トランジスタ直情に配置されていた抵抗によって制御されていました。
0. 67 Vあたりでベース電流が流れ始めるから、コレクタ電流も流れ始めます。
そのため、0.67 V以降は抵抗\(R_{L}\)に電圧降下が生じるため、E-C間電圧の傾きが小さくなるということでしょう。

トランジスタの各端子間(E-C, E-B, C-B間)電圧の入力電圧依存性図7 トランジスタの各端子間(E-C, E-B, C-B間)電圧の入力電圧依存性

実験に必要な部品一覧と実際の実験結果

必要な部品

実際の実験では少し問題が生じました!
回路解析で出した抵抗値だが、手持ちの部品ではそれに完全に合わせることができませんでした。
ということで、最初に解析したあと、手持ちの抵抗を確認することをお勧めします。
今回は、22 KΩと79Ω(83に出来るだけ近くした)で実験をしました。

部品一覧 型番 値段
直流安定化電源 DPS-3003(CUSTOM) 14091円
フレッドボードEIC-102B EIC-102B 700円
20 KΩ抵抗 × 1   セット購入
2 KΩ抵抗 × 1   セット購入
10 Ω抵抗 × 1   セット購入
22 Ω抵抗 × 1   セット購入
47 Ω抵抗 × 1   セット購入
トランジスタ × 1 2SC1815 セット購入
テスター CD731a 7980円

セット購入の部分ですが、よく使う部品がいっしょくたにまとめられて売っているセットがあるので、それを買った方が楽だと思います。
たぬし氏はOsoyooの電子工作部品セット(2080円)を使っています。
実験の回路は以下のようになりました。
もっと、測定が楽な方法とかないんかな。。。
もちろん、直流安定化電源の代わりに電池を使ってもOKです。
テスターとか含まなければ、3000円以下で出来る実験だと思います。

 

実験した回路写真図7 実験した回路写真

CD731aは絶版で売られていないので、もう一つは僕が使っていておすすめかつ2018年現在最強のテスターの一つである三和のPC7000を載せておきます。

実験結果

測定はテスターを使って行ったのですが、温度が上がると、計ってる電圧が変わっていくという問題が生じたので、いちいち電圧を0に戻して、温度が下がっただろう所から、次の電圧で測定しました。
調べてみると、この回路は温度に不安定な回路のようで、温度が上昇すると、一定の電流値に対して、\(V_{BE}\)が-2.2 mV/℃の割合で減少するようです。
このことが原因で、\(I_{C}\)が変化してしまい、動作点が変化してしまいます。

機会があれば、温度依存を測定してみたいところです。

図9 エミッタ・ベース間電圧、エミッタ・コレクタ間電圧、ベース・コレクタ間電圧の入力電圧依存性

さて、まずは、エミッタ・ベース間電圧、エミッタ・コレクタ間電圧、ベース・コレクタ間電圧の入力電圧依存性を示します。

エミッタ・ベース電圧と、エミッタ・コレクタ電圧は振る舞いは、シミュレーションとほぼ似た振ております。
0.2 V付近に謎のくねり?があるけれど、これは測定誤差かもしれません。
この誤差の問題に関連して、直流安定化電源が1 V以下では、割と安定せず微妙に変化し続ける、ということを発見しました。これは、装置の問題だけれど、安いものだし、そこまで安定性はないのかもしれないです。
今回は、エミッタ・コレクタ間電圧もきちりと電圧が上がっているけれど、最初に設定した、入力電圧が5 Vの時、2.5 Vより落ちていて1.5 V程度になっています。83Ωから79Ωに変えたから少し電圧降下も変わるだろうけど、まだ計算していないので、計算したら、載せます。けれど、静特性のグラフを見ると1.5 Vでも十分動く領域なので、問題はなしですね。

振る舞いを、理解できていないのがベース・コレクタ間電圧です。
シミュレーションより傾きが遥かに大きいですね。
これは、エミッタ・コレクタ間電圧を抜き去っているけれど、これはおかしいのか?とか、理解していない点があるので、勉強次第載せる予定です。

次は、\(I_{C}\)と\(I_{B}\)の入力電圧依存性(図10)ですが、割と綺麗に電流が増幅されている様が見て取れます。入力電圧が5 Vの時、\(I_{C}\)は\(I_{B}\)の225倍でした。結構増幅率でかいなーって感じですね。メーカーのデータシートによると、僕が使った、2SC1815-Yは増幅率の幅が120〜240まであるということなので、OKではあります。

ベース電流およびコレクタ電流の入力電圧依存性図10 ベース電流およびコレクタ電流の入力電圧依存性

ベース電流は上の図だと0に見えますが、下の拡大図を見ると、リニアに上昇している様が見て取れます。

ベース電流は入力電圧が5 Vの時、およそ0.2 mA位ですね。

結果としては、今回は、きちりと設計して動かしたので、電流増幅作用を機能させることができました。

しかし、温度に対して不安定という問題もあったので、次回はそれを解決するエミッタ設置増幅回路の設計と実験を行ってみようと思います!

トランジスタ(2SC1815)によるエミッタ接地回路【3】:設計と実験およびLTSpiceによるシミュレーション(電流帰還バイアス回路による電流増幅) はぁ、、今週の眠い指数は、日にちが進むにつれて上がってきてる。。。 けれど、一週間に一回路作って実験して、解析もすれば、1年で52...