回路技術

電気回路のお勉強・過渡現象ことはじめ(1) RC直列回路

こんばんは〜、たぬしでやんす。

電気回路をモリモリ動かす会社に来て4日経ちますが、ここ数年は回路に触れてもいないし、そもそも授業以外で実験したことがないので、回路動作のイメージが湧いていない!ということで、少し回路関係の勉強をしようと思ったたぬし氏。
ということで、ほぼ0から回路の勉強を始めて4日目。

実験はこれから会社で凄いやるとしても、理屈も理解しておいたほうがよかろう、ということではじめることにしました。
これからは勉強何ヶ月目とかも書いていきます。

まずは、数学的な厳密なことはさておき、まったり進めていきます!!

【問題】図のRC直列回路はt = 0の状態であり、この時キャパシタンスCも未充電(C = 0)とする。直流電圧Eを印加したとき、流れる電流及び電荷を求め、図示しました。

回路図図1 コンデンサを使った回路図

 

そもそも過渡現象とは何か

電源と素子を繋いで、何等かの回路を作った場合、電圧が生じ、電流が流れて回路の振る舞いが安定するまでに時間がかかります。
上図のように、キャパシタンス素子がある場合、平板に電流が流れて、徐々にたまり始めます。
平板に電荷がどんどん溜まっていくけれど、この溜まる量の限界値は極板の面積に比例している。大きい平板ならたくさん電荷がたまるぜ!っていう、直観的にもわかりやすい事実を表しています。
限界まで溜まると電荷がこれ以上入りきらないため、電流はこれ以上流れなくなります
即ち、時間がかなり経った場合、(たとえばt = ∞の) \(i = 0\)となるのです。

極板間に溜まる電荷図2 極板間に溜まる電荷

逆に、最初(t = 0)はキャパシタンスは空なのだから、電流もがんがん流れます
つまり、最初はたくさんながれていた電流が最終的には流れなくなるということが起きていて、電流は時間によって流れる量が変わっている、ということを示しています。
この、流れ始めてから溜まりきるまでの途中の状態を過渡現象と呼び、その状態を数式で解析しようーというのが、今回のお話です。
今回の場合、キャパシタンスに電荷が溜まりきって、もうこれ以上時間変動がない状態のことを定常状態といいます。定常状態って色々な分野で使うし知っておいたほうが良いかもしれないです。(定常状態の厳密な定義は違います。一定の周期的変化も含まれるから!これはまたいつか!

 

 

回路の微分方程式を解いてみよう

微分方程式の説明図3 微分方程式の説明

高校物理でやったキルヒホッフの法則とかいう、回路の公式?があるが、基本これを使います。

回路を一周すると、電位は0になることから、(回路の方程式とかなんとか、、)

\begin{align}
Ri+\frac{1}{C}\int idt=E
\end{align}

電流\(i\)[C/s]は、微小時間\(dt\)[s]に通る電荷の量\(dq\)[C]と定義すると、電流 \(i = \frac{dq}{dt}\)である。この関係式を使うと回路の方程式は、
\begin{align}
R\frac{dq}{dt}+\frac{1}{C}\int dq&=E\\
R\frac{dq}{dt}+\frac{q}{C}&=E\end{align}

上記の微分方程式を解けば良いということになります。
数学の話になるけれど、この手の同次微分方程式を解くには、まず過渡解(数学だと特殊解、というのかな?)求めます。
E = 0とした時の方程式が過渡解になるので以下の微分方程式をまず解いてみましょう。
過渡現象のqは時間に対応して変化するので、その解を\(q_t\)とおくと、

\[
\begin{align} R \frac{dq_t}{dt} + \frac{q_t}{C} &=0 \\ R \frac{dq_t}{dt} &=-\frac{q_t}{C} \\
\frac{1}{q_t}dq_t &= -\frac{1}{RC}dt \\ \int \frac{1}{q_t}dq_t &=-\frac{1}{RC}\int dt + A_1 \\
ln q_t &= -\frac{1}{RC}t + A_1 \\ q_t &= e^{-\frac{1}{RC}t}e^{A_1} \\
q_t &= A_2e^{-\frac{1}{RC}t}\\ \end{align}
\]
定常解の方は、十分時間が経って、もうキャパシタンスに電荷が溜まりきった状態なので、高校で習った公式そのまま

\begin{align}
q_s = CE
\end{align}

となります。一般解は過渡解と定常解の和なので

\begin{align}
q = q_s + q_t = CE + A_2e^{-\frac{1}{RC}t}
\end{align}

さて、ついに一般解が求まりました。
しかし、\(A_2\)の中身が分からないままです。これを求めるために初期条件なるものを代入します。

初期条件って何?

初期条件とは、この回路を繋ぎ始めた瞬間の状態のことを指しています。
つまり、測り始めてから経った時間t = 0[s]の時です。
この時、もちろんキャパシタンスには何も溜まっていないから、 q = 0になりましょう。
この二つを初期条件と呼びます。これらを上記で求めた一般解に代入すると、

\begin{align}
0 =  CE + A_2e^{0}\\ 0 = CE + A_2 \\ A_2 = -CE
\end{align}

初期条件により\(A_2\)の中身がわかりました!
つまり、本当の一般解がついにわかったということになります。

\begin{align}
q_t = CE(1 – e^{-\frac{1}{RC}t})
\end{align}

さらに、このqがわかると、\(i = \frac{dq}{dt}\)なので、上の式を時間tで微分すれば、電流の一般式がわかります。

\begin{align}
i = \frac{dq_t}{dt} = \frac{d}{dt}(CE – CEe^{-\frac{1}{RC}t}) = \frac{E}{R}e^{-\frac{1}{RC}t}
\end{align}

これらの一般解において、R = C = E = 1.0の時のグラフを図で示すと以下のようになります。

時間が経つと、電流が徐々に流れなくなって0に近づいていく様子が示されています。逆にキャパシタンスに溜まる電荷は徐々に溜まっていき、限界まで溜まると、もう増えなくなっています。
これは、プールに水を貯めるのと似ています。プールに溜まる水の体積がキャパシタンスに溜まる電荷qに対応し、流し込む水が電流に対応しています。
プールに水を貯めるのとこの回路の違う点は、水を一定の量で流せば、誰かが蛇口をひねらない限り、限界になるまで水の勢いが変わることはありません。
しかし、キャパシタンスの場合、キャパシタンスに電荷が溜まって、電荷の入る場所が減ると、それに従ってたまり方も変わってきます。

電流と電荷の時間依存性図4 電流と電荷の時間依存性

過渡現象の物理的意味(LTspiceシミュレーション)

C = 0.01μ, R = 10 kΩ, 電圧はスイッチをオンにした時1 Vとして、LTspiceによりシミュレーションを行いました。
赤色の線が、図1のEに対応しており、軸は左側にあります。スイッチ付きの電池という感じです。
緑色の線は、回路に流れる電流です。軸は右側にとっています。
図4のAの時( t  = 3 ms)でスイッチをONにしました。

その後、どのようなことが起きているのか時間軸に沿って説明します。

 

点Aで起きていること(スイッチONにした時)

さて、スイッチをONにした瞬間を見てみると、電圧が1 Vかかっています。
それにつられて、回路に流れる電流も一気に跳ね上がっているのがわかります。
上でも説明しましたが、キャパシタンスは最初は空っぽなので、すごい勢いで電子が流れ込むことができます
そのため、このようにいきなり、電流値が跳ね上がる。
つまり、キャパシタンスは、回路の状態を急激に変化させる素子である、という視点で眺めることもできます。

 

点A→Bの間で起きていること(過渡現象)

AからBの間は、なだらかに電流値が下がっていくことが見て取れますね。
これは、先ほど、計算した過渡現象そのものです。
極板にどんどん電子が溜まっていくと同時に空きが減り始めるので、指数関数的に電流は流れなくなり最終的には電流が流れなくなります
このひしめくあう電荷達のおかげで、極板には静電エネルギーが溜まっております。
つまり、これが世に言う充電された状態であり、溜まったエネルギーを再度電気エネルギーとして放電することもできます

点B→Cで起きていること

点Bではスイッチがオフになり、電圧が0 Vになっていますね。
すると、キャパシタンスの状態を変化させる性質が働き、急激に逆方向に電流が流れています。
この時、キャパシタンスに溜まった電荷達がもと来た道を一斉に流れていきます。
そのため、逆方向に電流が流れることになります。()
溜まった電荷達は、最初こそ勢い良く流れるので、電流値も大きいのですが、極板にいる電荷達が減るにつれ、流れる電流も減ります。
最終的には、極板にいる電荷はいなくなってしまい、点Cの電流が流れない状態に落ち着きます。
この回路で、充電から放電のプロセスを見たことになります。

 

電気回路のお勉強・過渡現象ことはじめ(2) 直列RL回路の振る舞い お盆が終わる。。。!たぬしですー。 回路を0から勉強し始めて、5ヶ月くらい経ちました。 会社では色々やってるけど、未だあんま...