アナログコンピュータ

ブロック図で見るRCローパスフィルタと積分回路

かなり久しぶりに記事を書くので、実験とか重いのではなく少しラフな話題から行ってみましょう!

RCローパスフィルタって一次遅れ系とよく呼ばれ、微分方程式で過渡応答として解析されたりしているけれど、なんかしっくりこないという事はありませんか?
僕なんかは、過渡応答なんて無数にあるし、計算したらそうなるってのは分かるけど、よく分からないという感じでした。
過渡応答自体は分かるんだけど、過渡応答することは分かったけれど、そこからどう設計とかに繋げていくか?という視点に至れませんでした。

そこで、今回は新たな視点として制御工学の見方を導入し、オペアンプを使った積分回路とRCローパスフィルタを微分方程式から見直し、比較することで新たに考えてみましょう。

ブロック線図で見るRCローパスフィルタと積分回路

RCローパスフィルタの微分方程式

まず、以下にRCローパスフィルタの回路図を載せます。
こやつを微分方程式で表してみます。

Rに着目すると、
\[i_R = \frac{V_{in} – V_o}{R}\]
またコンデンサに流れる電流を考えると
\[
i_C = C \frac{dV_o}{dt}
\]
となります。
この回路ではVoの後段に負荷などがないため、GNDに電流は全て流れていき
\[
i_R = i_C
\]
です。

\[
\frac{V_{in} – V_o}{R}
=
C \frac{dV_o}{dt}
\]
これを変形すると、
\[
RC \frac{dV_o}{dt} + V_o = V_{in}
\]

となり、これは一次遅れ系の微分方程式の一般形と同じ形をしているというわけです。

一般形は下記に示すように
\[
\tau \frac{dy(t)}{dt} + y(t) = K u(t)
\]
であり、各係数の意味は

\(\tau\) : 時定数
K : 利得
u(t) : 入力
y(t) : 出力

です。
一次遅れ系の微分方程式の一般形と照らし合わせることで、RCローパスフィルタは利得K=1である、ということを示しています。同様に、RCローパスフィルタの時定数は\(\tau=RC\)となります。

ここで示したことは、RCローパスフィルタは一次遅れ系の微分方程式の特殊形((\tau=RC, K=1\))であった、ということです。

RCローパスフィルタのブロック図

さて、微分方程式なんかはよく見かけるし、解いたからだから何よ?って思う人も多いことでしょう。
どうせ過渡応答するんでしょ?ってやつです。

ここではその手のことはやらず、このRCローパスフィルタのブロック図を書いてみましょう。
ブロック図というのは制御工学の文脈でよく出てくるやつで、入力信号から出力信号を各要素に分割し、それぞれの特性をつなぎ合わせて、一つの動特性の塊として扱おうというものです。
回路で言うとVinを入力したら、色々な処理を経てVoが出力として出てくるというわけです。

アナログ回路においても、この制御の文脈がかなり使えます。
特に、フィードバックに関しては、かなり見通しがよくなるので、アナログ回路を制御的に見てみるというのも結構良い訓練になります。
この制御的概念で整理された状態で過渡応答を考えると、よりなるほどなぁーとなる気がするのですが、これは僕だけでしょうか?

先の微分方程式を少し変形して、
\[
\frac{dV_o}{dt}
=
\frac{V_{in} – V_o}{RC}
\]
としておきます。
ざっと式の説明をしておくと、出力Voが上がるほど、Vin-Voは小さくなるので、傾き\(\frac{dV_o}{dt}\)は小さくなります。

早速、この微分方程式をブロック図にして眺めるべく、紐解いていきましょう。

Voについてみると、微分された\(\frac{dV_o}{dt}\)が数式内に混じっています。
この微分されている左項は積分すればVoになりますよね。
つまり、積分するボックスがあって、この\(\frac{dV_o}{dt}\)を積分ボックスに突っ込めば、Voが出力されると考えます。
現状をブロック図で書くと以下のようになっています。

変形した微分方程式の右項は\(\frac{V_{in} – V_o}{RC}\)であり、1/RCという係数がついています。
ここでは、(\tau=RC\)として係数器というボックスを新たに考えます。これは定数係数をかけるだけのボックスです。
先の積分ボックスと係数ボックスを含めたブロック図を以下に載せます。

ボックスの左側の\(\tau\frac{dV_o}{dt}\)はVin-Voでもあるということで、左側に加算∑のボックスを作成します。
Vinと-Voが加算されたものとしてボックスを作成し接続します。
これを見ると、加算機の入力のVin+(-Vo)の-Voは出力信号Voを-1倍したものであると気づきます。
すなわち、出力を負帰還として入力に戻したもの、とも解釈できるわけです。
(注意:ブロック図は先に行ったように等価交換の性質を持つためボックスの中身や接続の仕方は辻褄が合えば色々と変えることが可能です。けれどRCローパスフィルタにおいては、入力値と出力値(現在値)との差を積分しており、純粋積分器との比較のためにこの見方が有用なのでは?という視点で書いています。)

さて、出力が入力に戻っていく負帰還の性質を持っているということが分かったので、-1倍の係数ボックスを設置して負帰還に接続するという風にしてみると、このブロック図は完成します。

RCローパスフィルタをブロック図に分解してみてみると、上記のようになるという事が分かりました。
RCローパスフィルタをブロックに分解した時の構成要素として、加算機、係数器、積分器の3つによって構成可能です。
係数器+加算器の部分は出力がフィードバックしているということを分解したものであり、明示的に回路構成上に存在していません。
重要なのは回路的にはそう見えないけど、RCローパスフィルタは微分方程式から見ると積分器+負帰還(係数器による反転+入力部に加算器)として表現出来る、という解釈です。

次に、両者を比較するため、純粋な積分回路について考えてみたいと思います。

積分回路のブロック図

以下の回路図に従って、よくある積分回路について微分方程式を導出してみましょう。

理想オペアンプを仮定すると、イマジナリーショートから
\[
V_- \simeq 0
\]

入力抵抗に流れる電流iは、オペアンプの入力インピーダンスが高いのでコンデンサに全て流れていきます。
この電流は、

\[
i
=
\frac{V_{\mathrm{in}}}{R}
\]
となります。
これがそのままコンデンサに流れていきます。
反転端子は0Vなので、CV=qから

\[
V_o
=
0-\frac{q}{C}
\]
両辺を時間tで微分すると、

\[
\frac{dV_o}{dt}
=-\frac{1}{C}\frac{dq}{dt}
\]

となり、ここでdq/dt=iなので代入すると、

\[
\frac{dV_o}{dt}
=
-\frac{V_{\mathrm{in}}}{CR}
\]
となり、微分方程式にすることが出来ました。

この微分方程式をもとに先と同様にブロック図を作成してみましょう。
係数器と積分器に分けてみました。
普通に反転増幅回路なので、積分の方にマイナスをいれても良かったのですが、積分とそれ以外という形にしてみました。
今回の要素は積分器と係数器の2つで、フィードバックがかかっていないことが分かります。(注意:初期値とかは0としています。また積分ブロック自体の内部は負帰還ですが、動作としては積分として働くため理想的な積分器と考え、一つのボックスとして扱っています。)

このブロック図を見ると、-1/τは定数なので、Vinが一定入力だとすると、出力は直線的に変化します
これは定数の積分と同じということですね。
一方、RCローパスフィルタでは積分器の入力が\(V_{\mathrm{in}}-V_o\) となるため、出力自体が変化を抑える方向、すなわち負帰還として働きます。

RCローパスフィルタと積分回路のシミュレーション比較

以下にシミュレーションのLTspice回路図を載せます。
普通のRCローパスフィルタと反転積分回路で、R=100kΩ、C=100nFにしています。

入力として20ms周期のパルス波を入れて立ち上がりを見てみましょう。
反転積分回路は入力パルスに対して、反転しつつ線形に変化しているのが分かります。(図中緑)
これは定数を一回積分すれば、y=ax+bのような直線になることから、きちりと積分されているということが分かります。 
一方で、RCローパスフィルタは直線ではなく、折れ曲がって指数関数的振る舞いをしています。
これは、負帰還によって打ち消されていることによって、直線から徐々に折れ曲がっているということを表しています。

今回はあえて過渡応答などについては触れませんでしたが、純粋な積分回路と負帰還の入った積分回路で、振る舞いに違いがある、ということがなんとなく直感として分かる例なのでは?と考えています。
次回はこれを起点にアナログコンピュータを作ってみたいなぁと妄想しています。
そもそもアナログコンピュータを考える際に、基本となる要素が決まっており、加算器、
積分器、係数器などはその中の一つとして扱われています。

過渡応答について、全く同じ状況ではありませんが、以前に書いていた記事があったので一応貼っておきます。

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