回路技術

トランジスタ(2SC1815)によるエミッタ接地回路【3】:設計と実験およびLTSpiceによるシミュレーション(電流帰還バイアス回路による電流増幅)

はぁ、、今週の眠い指数は、日にちが進むにつれて上がってきてる。。。
けれど、一週間に一回路作って実験して、解析もすれば、1年で52個の回路をマスター出来るやもしれない。。そう思うと、胸の高まりを抑えることが出来ませんね!(注:睡眠時間を削ることはないだろう、否)

回路勉強を始めて2か月弱経ちますが、なかなか難しい。

電流帰還バイアス回路の電流増幅

回路図

回路図ですが、以下のような教科書等によく載っているものです。
前回の固定バイアス回路からの進化ポイントは、\(R_E\)の存在による、フィードバックがかかっていることで、回路の安定性が増すこと。(フィードバックについては後述)
前回の固定バイアス回路では、温度変化により、コレクタ電流の値が変わるという難点があった。
そこら辺は、後に回路解析を行った際に説明します。

また、\(R_1\)、\(R_2\)の存在のため、電圧\(V_2\)の値をこちらが、自由に決めることができます。

電流帰還バイアス回路の回路図図1 電流帰還バイアス回路の回路図

回路解析と設計

今回は設計を主にした、回路解析を行っていきます。
即ち、教科書的な回路解析ではなく、設計するには、必然的に必要な解析を行う、という試みです。

まずは、トランジスタの静特性から、見ていきます。
静特性を見ないと、どれくらいベース電流を流してよいか、コレクタ電流がどれくらいになるか、が想定出来ないからです。
ということで、設計の最初にまず、トランジスタの静特性グラフを見た方が良い!というのが現時点での僕の結論です。

1. トランジスタの静特性のグラフからベース電圧・コレクタ電圧を決定

 

静特性図2 2SC1815の静特性

まず、自分が使うトランジスタ(今回は2SC1815)の静特性をメーカーのホームページ等からダウンロードしてみてみよう!
Googleで2SC1815と検索したら、データシートが一番上に出てきたので貼っておきます。→ http://akizukidenshi.com/download/2sc1815-y.pdf
メーカーとか言っておきながら、秋月電子のホームページっぽいですが、そこは華麗にスルー!

前回の固定バイアス回路の記事で同じことを述べているので、細かい説明はそちらを参照してください。→

NPNトランジスタ(2SC1815)によるエミッタ接地回路【2】:設計と実験およびLTSpiceによるシミュレーション(固定バイアス回路)

今回は、静特性のグラフから、幅広いコレクタ・エミッタ間電圧においてコレクタ電流の変化が少ない\(I_B\) = 0.2 mAに決定。
その時のコレクタ電流\(I_C\)は、グラフから見積もると、 \(V_{CE}\)が5 Vの時、 \(I_C\)はおおよそ30 mA位である。

 

2. \(V_E\), \(V_L\), \(V_{CE}\)および入力電圧\(V_{CC}\)の決定

次に、1.で決定した値をもとに、入力電圧を考えます。

まず、図1の回路図を見て、\(V_{E}\)について考えると、
\begin{align}
V_{E} = V_2 – V_{BE}
\end{align}
であり、\(V_{E}\)は\(V_{BE}\)の変動をもろに受けます。
そのため、変動に対して十分に大きい\(V_{E}\)を設定する必要がある。
固定バイアス回路で学んだ、\(V_{BE}\)の温度依存は、-2.2 mV/ ℃位のようだ。
温度依存以外にも偏差が数10 mV程度あるようなので、\(V_{E}\)が大きく変化しないように、2 Vとします。

\begin{align}
V_{CC} = V_L + V_{CE} + V_E
\end{align}

で表される。今わかるパラメータは\(I_B\) = 0.2 mAの静特性グラフを見ると(図1) \(V_{CE}\)は、0.5 ~ 5 V位までコレクタ電流の変化が少なく安定している。
なので、この領域を使って行きたい。
今回は、 \(V_{CE}\) = 4 Vとしよう。

\(V_{out}\)に交流を出力するとすると、+側と-側に振幅を持ちますので、それが両側ともに同じ振幅を取れるように考え、\(V_{L}\) = 4 Vとする。
これらを足し合わせると、\(V_{CC}\) = 10 Vと決定出来る。

3. \(R_E\)と\(R_L\)の決定

\(R_{L}\)には、コレクタ電流が流れる。
先ほど決めたコレクタ電流\(I_{C}\)= 30 mAおよび\(V_{L}\)= 4 V から、オームの法則より

\begin{align}
V_{L} = R_L  I_C \\
R_ L \simeq 133 \Omega
\end{align}

\(R_{E}\)に流れる電流は\(I_{E} = I_B + I_C\)であった。
ここで、ベース電流はコレクタ電流に対し、無視できるレベルなので、\(I_{B}\) = 0としよう。故に、オームの法則から

\begin{align}
V_{E} = R_E  I_E   \\
V_ E \simeq R_E I_C\\
R_E = 66.6 \Omega
\end{align}

注意点:許容コレクタ損失について

コレクタ損失というものを考慮する必要があるということで、今回初めて学んだので付記しておきます。

トランジスタに流れる電流はベース電流とコレクタ電流が主ですが、電流を増幅して使う場合は、コレクタ電流はベース電流の百倍を超える。
そのため、コレクタ電流がトランジスタにに流れる電流のすべてと考える。
部品を触ると、発熱していることからわかるように、電流を流すと、全てのエネルギーが電気として流れているわけではなく、熱に変換されて漏れたりもしている。
この熱によるエネルギーの損失をコレクタ損失と呼ぶようだ。

これを、数式で表すと、
\begin{align}
P = V_{CE} \times I_C
\end{align}

となる。Pは消費電力(電気回路において消費される電力)を指している。単位を考えると、Vは[J/c]、Iは[A] = [c/s]なので、Pの単位は[J/s]。一秒あたりに消費されるエネルギーとなり、物理量の意味と単位がきちりと合っている。

今回の値を代入すると、

\begin{align}
P = V_{CE} \times I_C = 4 {\rm V} \times 30 {\rm mA} = 120 {\rm mW}
\end{align}

これが許容範囲内かどうかを確かめるため、データシートを再度眺めます。
温度とコレクタ損失の関係を表したグラフが載っております。

許容コレクタ損失図3 2SC1815の許容コレクタ損失と温度の関係

120 mWの線を図3に、赤線で示していおり、交点を赤い破線で示しています。
このグラフを眺めてみると、温度が0 ~ 25℃までは、400 mWまで流せるので、先に算出した120 mWはクリアしていることがわかります。
このグラフからすると、周囲温度が93℃までは、許容範囲内ということがわかる。

 

3. \(I_1\)の決定

次に、回路図左側にある抵抗\(R_{1}\)、\(R_{2}\)を求めたく思うところですが、まずはそこに流れる電流がわからないと、計算できない。
ここでは、先ほども使った仮定を使って解析をすすめる。

これは、コレクタ電流に対し、ベース電流が非常に小さいから使えた仮定である。
今回も同じ理論を使い、抵抗\(R_{1}\)、\(R_{2}\)に流れる電流に対し、ベース電流が非常に小さい、という設定にする。
この非常に小さい、というのを定量的にするとおよそ10倍の差があれば、そう言えるようだ(私の持っている既書参考)。

すると、
\begin{align}
I_1 = I_B \times 10 = 2 \rm mA
\end{align}
で良いことがわかる。

4. \(V_{1}\)、\(V_{2}\)の決定

次に、抵抗\(R_{1}\)、\(R_{2}\)各抵抗にかかる電圧を求める。
\(V_{BE}\)がONの時は、0.7 V位の定電圧源とみなせるので、
\begin{align}
V_2 = V_E + V_{BE} = 2 + 0.7 = 2.7 (\rm V)
\end{align}

となる。故に、

\begin{align}
V_1 = V_{CC} – V_{2} = 10 – 2.7 = 7.3 (\rm V)
\end{align}

とわかる。

余談だけれど、抵抗\(R_{1}\)、\(R_{2}\)に直列に電流が流れているとみなせるので、\(V_{2}\)は簡単に計算でき
\begin{align}
V_2 = V_{CC} \times \frac{R_2}{R_1 + R_2}
\end{align}

となる。簡単に分圧比で\(V_{2}\)が計算出来るので、設計に都合が良い。

5. \(R_{1}\)、\(R_{2}\)の決定

これで、\(R_{1}\)、\(R_{2}\)に流れる電流と、各電圧がわかったので、抵抗値をオームの法則から計算する。

\begin{align}
R_1 = \frac{V_1}{I_1} =  \frac{7.3}{2 \times 10^{-3}} = 3.65 (\rm K\Omega)
\end{align}

\begin{align}
R_2 = \frac{V_2}{I_1} =  \frac{2.7}{2 \times 10^{-3}} = 1.35 (\rm K\Omega)
\end{align}

これで全ての素子のパラメータの設計が終わりました!!
次に、持ってる部品でどれだけ近づけられるか、が問題になってくるわけですが、今回は概ね、合成抵抗でなんとかなりそうです。
持ってる部品で組める値にちょいと変えて実験とシミュレーションをしようと思うので、その値を以下に載せますね。

 

設計した回路の各パラメータ図

設計した回路パラメータ図4 設計した回路パラメータ

 

設計した回路は以下のようなパラメータになるように設計しました。
シミュレーションおよび実験でどうなるかを、これから調べていきます!!!
ここまででだいぶかかったけどね。。。。

 

 

LTSpiceによるシミュレーション

まずは、シミュレーションを行た回路図と、命令を図5に載せます。

LTSpiceでのシミュレーション回路図5 LTSpiceでのシミュレーション回路

今回のシミュレーションでは、電源を0 V ~ 10 Vまで、0.02 V刻みで計算させています。
命令を決定する方法は、以前の2SC1815を使った固定バイアス回路の記事の「LTSpiceのシミュレーション設定方法の1. 」にて同じ命令について詳しく書いていますので、ここでは割愛させて頂きます。

LTSpiceによるシミュレーション結果

 

各素子に流れる電流の入力電圧依存性図6 各素子に流れる電流の入力電圧依存性

図6に各素子に流れる電流の入力電圧依存性を示します。
この結果から、コレクタ電流がきちりと増幅していることがわかります。
増幅率は、
\begin{align}
I_C = h_{FE} I_B
\end{align}

から、増幅率\(h_{FE} = 184.43\)であり、妥当であることがわかる。
C、\(I_C\) = 30 mAを使おうとデータシートから決定したが、増幅率は製品の個々の素子で違うので完全に同じにはならない。
シミュレーションでは、入力電圧10 Vの時、\(I_C\) = 26.36 mA、\(I_B\) = 0.142 mAとなった。
R1に流れる電流は設計の時点で、2 mAとしていたけれど、シミュレーションでもおよそ2 mAとなっている。
これらの事実を考慮すると、およそ設計したパラメータで間違いないように思える。電圧等も確認しておく。

 

回路図右側にある素子の各素子間電圧の入力電圧依存性図7 回路図右側にある素子の各素子間電圧の入力電圧依存性

次に、回路図で言うと、右側の素子、\(R_L\), \(R_B\)およびE-C間電圧を示します。
\(R_L\), \(R_B\)は入力電圧が2 V付近から立ち上がり始めて、線形に電圧が上がっています。
確かに、2 VまでのE-C間電圧を見ると、入力電圧がそのままE-C間電圧になっていて、即ち\(R_L\)に電流は流れていないということを意味している。
つまり、コレクタ電流が流れていないということなので、2 V位までトランジスタがOFF状態である、ということだろう。
一方で、\(R_L\)に電流は流れていないということは、\(R_1\)の方に全ての電流が流れているということであり、実際に\(R_1\)に流れる電流を見ると、入力電圧を印加した瞬間から電流が流れている。

トランジスタがONに成った時は、E-B間電圧が0.7 V程度の定電圧源とみなせるようになることから、E-B間電圧を見てみよう!
図8に、回路図左側にある素子の各素子間電圧の入力電圧依存性を示す。
E-B間電圧を見てみると、2 Vを過ぎたあたりで、飽和して0.8 V程度で飽和しており、トランジスタがONになったということが分かった。
入力電圧が0.7 V付近でE-B電圧は飽和すると思っていたので、何故なのかわからん。。何か重大な勘違いをしている気がする!!今後の課題です。

\(R_1\)には、電圧印加後すぐに電圧降下が生じており、かつ入力電圧が10 Vの時、\(R_1\)にかかる電圧は7.4 Vであり、設計した計算値7.3 Vに非常に近い。このシミュレーションから、10 – 7.4 = 2.6 Vが\(R_2\)にはかかるだろう。
これらの値から、実験しても設計通りになることが期待される。

 

回路図左側にある素子の各素子間電圧の入力電圧依存性図8 回路図左側にある素子の各素子間電圧の入力電圧依存性

 

実験回路図と使った部品一覧

実験の条件

以下に実験に使ったブレッドボードと回路写真を載せておきます。
抵抗は、手持ちに設計通りの値はなかったので、直列接続で近しい値にしてあります。

3.65 k = 3.3 k + 150 + 100 × 2
1.35 k = 1 k  + 150 + 100 × 2
132 = 100 + 22 + 10
67 = 47 + 20
以上の抵抗を使っております。
これらの抵抗を実際テスターで測ると、素子ごとに誤差があるため、公称値とは少し異なっている。
図9にテスターで測った値を載せています。実験結果の解析は、この実際の抵抗値を使って計算することにします。

また、直流安定化電源から来る電圧も、デジタルなので、実際の値と表示された値が微妙に異なっていました。
なので、毎回テスターで入力電圧も測っております。誤差は\(10^{-1}\)オーダーなのでそこまで解析結果に誤差はでないと思ってはいますが、一応。

実際の回路図図9 実際の回路図

使用した部品および装置一覧

 

セット購入の部分ですが、よく使う部品がいっしょくたにまとめられて売っているセットがあるので、それを買った方が楽だと思います。
たぬし氏はOsoyooの電子工作部品セット(2080円)を使っています。

部品一覧 型番 値段
直流安定化電源 DPS-3003(CUSTOM) 14091円
フレッドボード BB-2T2B 600円
テスター CD731a 7980円
3.3 KΩ抵抗 × 1   セット購入
1 KΩ抵抗 × 1   セット購入
150 Ω抵抗 × 2   セット購入
100 Ω抵抗 × 4   セット購入
47 Ω抵抗 × 1    セット購入
22 Ω抵抗 × 1    セット購入
20 Ω抵抗 × 1    セット購入
10 Ω抵抗 × 1    セット購入
トランジスタ × 1 2SC1815 セット購入

CD731aは絶版で売られていないので、もう一つは僕が使っていておすすめかつ2018年現在最強のテスターの一つである三和のPC7000を載せておきます。

実験結果

実験結果を以下に載せます。
さて、まずは\(I_B\)と\(I_C\)を見ると、綺麗に増幅されている様がわかります。10 Vの時、増幅率\(h_{FE} = 152\)でした。
\(I_C\)は、10 Vの時28.71 mAで設計の時の値30 mAと比べても非常に近しい値を示している。
\(I_1\)も入力電圧が0 Vから増えるとともに、流れ始めているのでシミュレーションと振る舞いは合致している。
これは、設計が成功しているのでは!?各素子間の電圧を見てみよう。

 各素子に流れる電流の入力電圧依存性図10 各素子に流れる電流の入力電圧依存性

 

図11を見てみると、驚くほど、シミュレーションと振る舞いが似ていて、正直感動した!!!!!!
設計の効果はやはり有りなんだなー、と簡単な回路ながらに感じた。
得られるものも大きいし、設計は初心者ほど、やってみたほうが良いと思う。

入力電圧10 Vの時の、各素子の電圧値は、E-C間電圧が4.2 V, \(V_L = 3.79 V\), \(V_E = 1.93 V\), \(V_1 = 7.74 V\),   E-C間電圧が0.668 Vだったので、シミュレーションとも設計値ともかなり近い値を示している。
今回は、設計してその通りに動いたと言っても良いだろう。

しかし、一つの記事を書くのに滅茶苦茶時間かかるなぁ。。。
もっと回路が複雑になったらどうなるのか、見当がつかないけれど、勉強にはなる。。。

各素子間電圧の入力電圧依存性図11 各素子間電圧の入力電圧依存性
トランジスタ(2SC1815)によるエミッタ接地回路【4】:電圧増幅回路の設計とLTSpiceによる詳細なシミュレーション エミッタ接地増幅回路ってのは、電圧を増幅するもので、電流増幅はエミッタ接地増幅回路の主な部分ではない、という事をプロから言われ、なる...

電流帰還バイアス回路の電圧増幅

作成中