たぬしです。
北斗の拳のような、風雲乱世を感じる今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
風雲乱世は非常に怖いものですが、見方を変えれば変化の激しい世界である、ということも言えますし、あるいはそれをチャンスにする者も現れることでしょう。
現代では、我々の住む日本国は資源が少ないことから、加工貿易のように、あるものに付加価値をつけて外に売り出す、ということがよく行われています。
その中でも、目に見えない価値として、教育がよく普及し、噂によれば科学技術立国とうたわれており、実際にかつては多くの電化製品が世界をまたいで売れた時代がありました。
しかして、昨今では、学生の理科離れや深刻な人口減少を契機として、世代間での技術伝達がうまく行われず、日本は衰退の一途を辿っている、というような話をよく聞きます。
日々、これらの問題については、アンテナを張り巡らしておりましたが、色々な視点での情報について、忘備録として少しまとめておこうと思います。
結論としましては、
- 世間でささやかれるほど、理科離れが起きているといった事実を示すデータはない
- 現場の声や、人口減少等による入学試験の易化の傾向から、理系進学者の力が下がっている可能性はある
- 15歳以上・仕事ありの日本人の平気勉強時間は約10分弱
理科離れって何?
そもそも理科離れという言葉は、どうやら1980年代後半に教育界で生まれた言葉のようです。
1990年中ごろから、どこからともなく理科離れという言葉が世に増えていき、ついには、平成5年の科学技術白書が、児童生徒の「理科」に対する関心の低さをデータで示しました。
この白書では、理科離れという言葉を用いてはいないようですが、世に広まるのに大きな影響があったと考えられております。
理科離れに関する資料と実際
さて、資料等を調べてみますと色々あるわけですが、素人とはいえ、出来るだけ確度の高い情報が欲しい。
そのためには、きちりと出典やデータに基づいた議論がされているものが良いものです。
様々調べた結果、2015年に京都大学の長沼祥太郎さんという方が、「理科離れの動向に関する一考察」という論文を発表しておりますので、引用させていただきます。
出典:理科離れの動向に関する一考察 -実態および原因に焦点を当てて- 長沼祥太郎
結論を端的にまとめますと、
- 理工系学部の志願者比率は、深刻な状況に陥ってはいない
1970年代以降約18%~28%で増減を繰り返している - 少子化による工学部志願者数は減少している
工学部:1992年では66万7246人から、37万5199人に減少。
理学部:1992 年では19万8183人から、22万2282に増加。 - 理工学部志願者の学力低下は、理論的にはありうる(明確に学力低下を裏付けるデータはない)
少子化により大学の定員割れが起き、合格水準が下がっている → 理工系の学力低下の可能性 - 市民の科学に対する理解度および関心は、先進諸国に比べて低い。
英国および米国に比べ、科学技術に関する関心が低いことが、科学技術政策研究所の調査で判明 - 中学生あたりで、理科系科目や科学に対する関心が大きく低下する様が見て取れる
- 18歳以下で、理科および科学に関心がなくなった層は、18歳以降も継続して科学に対する関心が低いという傾向がある
こういった感じですので、こうして見てみますと、理系離れが進んでいて、世も末感が出ているわけではありません。
けれど、いかにも理系離れといった感じが、ある種の固定概念のごとく吹聴されておるのは、どういった理由なのでありましょうか?
自分がこれまで聞いてきたことをもとに考えてみます。
大学や研究所の先生方から聞いた話
僕は今の会社に行く前は、ずっと物理の研究に従事しており、研究所関係の人と接することがほとんどでありました。
また、生徒たちともじかに触れあうことが出来たので、それなりに肌感覚みたいなものはあると思われます。
その中で、先生方に聞いた印象的な話をいくつか紹介してみたいと思います。
専門家育成の観点
( ゚Д゚)「たぬしくん。もう今はさぁ、実験屋の若手はなかなか育たないよね。ただでさえ、成長に年単位のスパンがかかるのにも関わらず、10年位やって去っていく人もたくさんいるからね。総合的に見て、今の日本のシステムだと、どんなに出来る人でも、科研費が取れなくてひーひーいう事もあるし、給料が見合わないと感じる人も多いだろうしね。特に、子供が生まれたらお金も必要だしね~子育てに時間も取りたいという場合もあるだろ?」
「実験屋一人育てるのも大変だよね。。。実験て手先のこともあるから、少し体験したくらいでマスター出来ない匠の技術の部分があるじゃない。今は技術の伝承という点では、少しまずいかもしれないよね。ある分野なんて、最若手が40代って言うんだから。その下の世代でほぼマスターしている人が少ないのよね。」
確かに、会社であっても、「実験も出来て、解析や解釈も出来る、さらには周辺の専門知識もそれなりにある」ような人を育てるのはかなり困難を要するように思います。
僕がそう思う理由は、それなりにある分野で自分の専門性を上げたい場合、社外で自分で勉強したり、理解を促進させるように考えたりする時間が必須だと思うからです。
即ち、初期の段階では、ある程度、勉強のために自分のプライベートタイムを侵す必要があるということであります。
これは、よほどの興味があったりしないと、お金ももらえないのに自己勉強なんてしてられるか!!という境地に陥ったとて、何ら不思議ではありません。
研究者であっても、様々な理由やライフステージの変遷に伴い、学習時間が減る時期というのはあるでしょうし、ままあることでしょう。
学生に対する視点
( `〇´)ノ「最近の学生はさ、質問してもぱっと答えが文章で返ってこないことが多いんだよ。」
たぬし( `´)「それって物理の難しい質問だからじゃないんですか?」
( `〇´)ノ「それが、雑談でもそうなんだよ。帰ってくる返事が、Line的というか、短文なんだよね。文章で返ってこないの。」
どちらかというと、理系云々というより、その背景にある、文章読解とか言語に関する話を聞くことがありました。
昨今は、中高生の読解力という話もニュースで上がっていたので、その点についても調べたことを載せておきます。
中高生の読解力が低下しているのではないか?という問いかけは、国立情報学研究所の調査により提案されております。
中高生25000人を対象とした調査であることから、サンプル数も十分確保されており、まずまず信頼がおけるように思います。
さて、その結果によりますと、「中学生の15 %が意味理解の最初のステップである文構造の把握が理解できないまま卒業」ということであります。
文章の理解という点では、僕は自分の生活で差し迫って日本全体の衰退を感じたことはありません。
もちろん、話す言葉が、極端に稚拙であったり、「マジパネーションじゃね?おれっちイケイケイリュージョニストじゃね?」みたいな言葉を聞くことはありますが、いつの時代もそういう人はあったでしょう。
言葉が厳密である人は、確実に思考が深く、かつ多くの事物や現象の観察において、様々な視座や世界を持っていることは間違いがありません。
しかし、そのような人が多数派であるか?と問われると、いつの時代もマイノリティだったのではないか?と感じるわけです。(この話は、データに基づいた見識ではなく、僕の推測であります)
そうはいっても、読解力の低下がまことしやかに叫ばれているし、上述したような理系離れの話もあります。
これらのことから、そもそもみんなどれくらい勉強してるんや?と、思い立ちまして、調べてみました。
15歳以上の日本人の平均学習時間
e-statの平成28年社会生活基本調査に日本人の普段の行動別総平均時間が載っております。
さて、我々が興味を抱いているのは、およそ大人の諸氏の勉強時間なので、15歳以上のデータを下に載せております。
データそのものは全くいじらず、学習時間の部分だけオレンジ色で色付けしました。
さて、割とすさまじい結果でありますが、男女の総平均を青文字にしております。
そうです、学習時間わずか「11分」。
下に目線を移し、仕事に就いている人(有業者)の男子と女子の学習時間を赤色で示しております。
結果、男子11分、女子10分であります。
想像以上に少ないなー、と思ったのですが、先進国や中国などの今ホットな国々はどうなのでしょうか?
もちろん大人数の平均値ですので、そもそも様々な人がいるわけですが、それにしても衝撃的な結果だと思います。。。
も、もはや俺には解釈できねー!!
理系離れとかそれ以前の問題である、というような気がしましたが、そう結論付けるには、より精密なデータが必要になると思いますので、時間があればもう少し掘ってみようと思います。