たぬしですー。
キムタクが出ているという理由だけで、マスカレードホテルを開演初日に見てきたので、その感想を遅ればせながら記しておこうと思います。
果たして、さしたる面白さもなく、家で見れば良い、というのが結論です。
監督&キャスト
監督:鈴木雅之
本能寺ホテルの監督をやった鈴木監督が、再度ホテル系にトライしたようで、ホテル系が好きなのでしょうか?
ホテルに何らかのモチベーションを持っているのかもしれません。
この方は、もともとドラマ畑の人で、ショムニやHEROなどのチーフディレクターを手掛けていたようです。
映画監督としては、GTOなどの作品は有名ですね。
監督作品一覧
- GTO(1999年)
- 世にも奇妙な物語 映画の特別編(2000年)「携帯忠臣蔵」(監修、演出)
- NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE(2004年)
- HERO(2007年・2015年)
- プリンセス トヨトミ(2011年)
- 本能寺ホテル(2017年)
- マスカレード・ホテル(2019年)
新田浩介 役:木村拓哉
思ったより、良い演技をしていました。
かつて、「無限の住人」という作品で、非常にキムタク感あふれる演技をしていたのですが、今回は割とフラットにキャラを演じられており、際立ったキムタク感は感じられなかった。
この作品は、もはやキムタクの挙動しかみるものがないと思うていたので、少し残念でありました。
全体的な印象
結論:映画館で見る必要はない
結論から書きますと、映画館で見る必要性が全くない映画だった、と思いました。
話の中心軸は、ホテルに現れるであろう、誰だかわからない犯人を、ホテルマンと警察官が一丸となって索敵し、捕まえる、というものであります。
しかして、映画中では様々なエピソードが、散文的に盛り込まれていて、一つのまとまりあるストーリーの一部として意味を成していないものもあります。
家でドラマとしてみるには良いのですが、大きなスクリーンで、映画としてみると、その散漫な枝葉の物語は冗長でしかなく、かつ最後に大きなカタルシスを得られるような話でもないので、印象が悪くなってしまいました。
また、そこに輪をかけて、悪かったのは、犯人が捕まった後に、仮面舞踏会の再現とも取れる「映画的映像」を盛り込んでいたことで、これが、果たして浮いているのであります。
仮面舞踏会の演出について
最後に犯人が捕まったあたりで、およそ多くの人が、心情的に最大の盛り上がりを感じたであろうと思うのですが、その後に、キムタクの瞬間の幻視ともいうべき、仮面舞踏会が、眼前に再現されるのであります。
その理由は、これまで仲間としてぶつかり合いつつも、一緒に仕事をしてきた長澤まさみ扮するホテルマンの私服姿に見とれた、というような視覚的表現であると思います。
もしかしたら、恋なのかもしれません。
果たして、それが効果的であったかと問われれば、不明であります。
かつて、ゲットバッカーズという漫画において、美堂蛮がみせた、邪眼を思い出させました。
「いい夢見れたかよ?」的な。
また、詩で例えますと、かのイギリスの画家、ウイリアムブレイクの「無心の前触れ」という詩が思い起こされます。
その美しい冒頭を、見てみましょう。
Auguries of Innocence : William Blake
(無心の前触れ:ウイリア ムブレイク)
To see a World in a grain of sand,
(一粒の砂の中に世界を見て)
And a Heaven in a wild flower,
(一輪の花に天国を見るには、)
Hold Infinity in the palm of your hand,
(君の手のひらで無限を握り、)
And Eternity in an hour.
(一瞬のうちに永遠を掴め)
かの映画における仮面舞踏会は、瞬断された現実のうちに、彼が一瞬のうちに掴んだ、ある種の世界を表現したかったのでしょうか。
このような、邪推をさせるほどに、この描写だけが、浮いていたのであります。
また、この手の自己の心理を、さも自分が見ていたかのような世界として投影して、鮮やかに見せるといった手法は昨今の流行なのでしょうか?
僕が体験してきただけでも、すぐに思い浮かぶのが、「シェイプオブウォーター」における主人公二人のダンスシーンや、「打ち上げ花火下から見るか横から見るか」におけるメリーゴーランドなどが思い浮かびます。
しかして、この手の手法は、よほどうまくやらない限り、悉く失敗していると感じます。
上記二作においても、あまり良い演出とは思えませんでした。
それくらいしか、書くことがないような映画でありまして、お家でまったりと見れば楽しめるものであると思います。
単純に特番ドラマとしてみるとそれなりには楽しめると思います。
映画というものを、大きいスクリーンと良い音響を利用して、我々視聴者にテレビや既存の映像メディアと違った形で提供される、総合芸術と捉えて考えますと、あまり良いものではなかったなー、という印象でした。